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2013.07/18 科学と技術(リアクティブブレンド6)

半導体用高純度SiCを製造するためには、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂のリアクティブブレンドで合成される有機無機ハイブリッド前駆体が重要な役目をしている。有機物なので高純度化が容易でその品質管理も簡単である。

 

さらに、分子レベルで均一になっており、この高分子前駆体を1000℃で熱処理し得られるシリカと炭素の混合物は、反応速度論で解析すると均一素反応の系として扱えるほどである。すなわちこの高分子前駆体の技術を用いると反応式の化学量論比どおりに原料を仕込みSiCを製造できる。

 

シリカ還元法による当時の粉末製造技術では、1450℃以上でSiOガスが発生し、気相反応でウィスカーが生成するため粉末とウィスカーの混合物が生成して問題になっていた。これを防ぐために、化学量論比よりも多い炭素を用いてシリカと炭素を固めたペレットを用いる技術が生産に使用されていた。

 

過剰に用いた炭素はSiC反応終了後燃焼させて取り除く。このような製造方法のため必ず粉末の表面はシリカで覆われることになる。このシリカ不純物を取り除くためにフッ酸と硝酸の混酸で洗浄する必要があった。

 

しかし、混酸で洗浄してもシリカ不純物を完全に取り除くことができず、1%前後の不純物酸素がSiC粉末に必ず含まれていた。この1%前後の不純物酸素のうち、半分以上はSiC粒子の内部に閉じ込められていることが解析してわかった。すなわちSiC化の反応途中で未反応のシリカが生成したSiCに取り込まれていたのだが、この不純物酸素の存在のため99%以上の高純度SiCを合成することが当時不可能であった。

 

ところがリアクティブブレンドで製造されたシリカと炭素の混合物から製造されるSiC粉末では、粒子の中に酸素が不純物として閉じ込められておらず、また、シリカと炭素を炭素が残らない化学量論比で反応させることが可能だったので、過剰の炭素を取り除く処理が不要となり、99.9999%の純度のSiCを合成することに成功した。初回の実験で真黄色の粉末が得られたときには無機材質研究所の猪股先生始めSiCをよくご存じの先生方はびっくりしていた。

 

初回の実験で高純度SiCが合成されたので、この前駆体を用いたシリカ還元法の速度論的解析を学位論文のテーマにしようと考えた。当時業界で行われていたシリカ還元法のSiC生成機構は複雑で動力学的手法で解明されていなかった。リアクティブブレンドによる前駆体を用いれば化学量論比での反応が可能なだけでなく、分子レベルで均一に反応を行う事ができ、そのため均一素反応の取り扱いができる。しかしこの反応解析を行うためには2000℃まで急速昇温可能な熱天秤が必要であった。

 

<明日へ続く>

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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