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2013.08/02 科学と技術(10)

昨日までのゾルをミセルに用いたラテックス合成技術は、コア・シェルラテックスの開発過程で失敗した実験の条件に開発のヒントがあった。

 

このような事例は科学の発展の中に数多くある。例えばポリアセチレンの重合実験で、学生が触媒量を間違え導電性高分子を発見された白川先生の話がある。この話は研究目標が導電性高分子であり、ゴールが明確になっている実験においての失敗である。ゆえに失敗実験ではあるが、その実験結果を見落とす確率は低くなる。新聞では「幸運にも学生が実験に失敗した」、と紹介されていた。

 

しかし、ゾルをミセルに用いたラテックスを発見したときの開発目標はコア・シェルラテックスである。ゾルをミセルに用いたラテックスとは対極にあるゴールで、そのうえこのラテックスは明らかに失敗と判断される状態である。このような失敗は、白川先生の事例のような幸運の失敗にならない。よほど注意して実験を行わない限り、第三者から同様の技術が公開されたときに、残念に感じる失敗となる。

 

実はゴム会社で高純度SiCの開発を担当していたときにこのような残念な経験を何度もした。すなわち自分が失敗と思った実験が重要な発見に結びつく実験であった残念なケースである。観察力が無く、勘が悪いと結論づけても対策を打たなければ、このようなケースは改善されない。またこのような残念なケースでは、勘が悪いとしてかたづけてしまう事が多い。しかし3度や4度繰り返すとこの様なケースの対策が重要なことに気づく。

 

それでは失敗を残念なケースにしない対策とはどのような対策があるのだろうか。弊社の問題解決法はこの経験則も取り入れて、失敗を残念なケースにしない対策を提供している。すなわち失敗を新たな技術のヒントにする手法である。

 

一方以前にも紹介しているノーベル賞を受賞したヤマナカファクターの発見は、白川先生のケースと異なり、積極的に成功につながるアブノーマルな実験を行い、それが失敗とはならずに大発見となったケースである。山中博士は「運が良かった」と謙虚に発言されているが、あのような実験は失敗というものが新しい発見を生み出す、ということの重要性に気づいていなければできない。すなわち運ではなく頭の良い実験だったのである。

 

あらためて山中博士のお人柄に感心し、少しでもそこへ近づきたい、と反省した。この山中博士のケースも過去に紹介したように弊社の問題解決法には取り入れている。すなわち弊社の問題解決法は、頭の悪い人間が度重なる失敗経験を重ね、その対策のために生み出した問題解決法で、科学的なTRIZやUSITと異なる。

カテゴリー : 一般

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