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2013.08/09 科学と技術(17)

高純度SiCの事業が立ち上がるまで様々なテーマを片手間に遂行していた。ある日、何か成果を出さなければいけないというので、1ケ月後までに新材料と新商品企画を行え、と指示が出た。「まず物を持ってこい」というのが当時の本部長の口癖だったので、この指示は、1ケ月後までに新商品を持ってこい、という指示と等価である。そしてそれができなければ結果は想像できた。

 

さて、何を企画するのか。アイデアは豊富にあった。ただし新材料で1ケ月後に新商品の姿にできるアイデアは、その中で一つか二つである。まだセラミックスフィーバーの嵐は去っておらず、その嵐の中で金属加工に使用する切削チップの開発状況が新聞でいくつか取り上げられていた。従来サーメットで使われていた分野へどんどんファインセラミックスが入り込んでいる、という内容である。それらの記事の中で、SiCで鋳鉄を削れたら低コスト長寿命のバイトができる、と紹介されていた。

 

SiCは脆くてさらに切削中に鉄と反応するので切削工具には使用できない、と説明が書かれていた。これならば1ケ月で問題解決できそうだ、と考えた。すなわちSiCの靱性向上と鋳鉄の反応防止を考えれば良いのである。さっそく弊社の問題解決法にあるK0チャートとK1チャートを作成し開発計画を立案した。

 

すなわち、新商品は切削工具で、そこに用いる新材料は鋳鉄を削ることができるSiC系セラミックスである。SiCの靱性向上策として、当時セラミックスの論文に紹介されていた、超微粒子分散による破壊エネルギーの伝播防止策を採用し、鋳鉄の反応防止策として、TiCを活用することにした。すなわちSiC-TiC系セラミックスを新材料の開発ターゲットに据えた。

 

ここまで具体化されるとあとはタグチメソッドでスピードアップするだけである。しかし当時タグチメソッドを知らなかった。そのかわり日科技連の研修でならった実験計画法を改良したクラチメソッドを開発していた。これは、ポリウレタンの難燃化技術開発で実験計画法を使用していたときに、あまりにも実験計画法が外れるので、それを改良した方法である。すなわち、開発では一般に改善方向が問題となるので、実験計画法を行うときに、測定値をそのまま使うのでは無く、相関係数を用いると面白いのではないかと考えた。すなわち相関係数を最大にできる条件を実験計画法で探ればもう少し当たる可能性が高くなるのでは無いか、と考えた。

<明日へ続く>

カテゴリー : 一般

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