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2013.08/19 科学と技術(27)

1990年頃までパーコレーション転移の科学が普及していなかった化学の世界で、パーコレーションという現象を記述する方法は、混合則という数式であった。

 

すなわち、電気抵抗の直列接続と並列接続になぞらえた式を中心に、様々な式が提案されていた。1980年代の日本化学会の年会におけるアカデミアからの発表でも混合則が使用されており、数学の世界で誕生したパーコレーションの考え方は普及するのに、議論開始から30年以上かかったことになる。

 

絶縁性オイルに半導体粒子を分散した電気粘性流体の研究開発を担当したときにパーコレーション転移の世界を知った。同じ時期に東工大の研究者から、高分子微粒子分散系の現象を考察するときに混合則ではなくパーコレーションの考え方を用いた報告があった。

 

写真会社に1991年に転職し1年間ほど時間に余裕があったのでパーコレーションの科学について勉強した。数値計算では実際のパーコレーションと一致しないような印象を受けたので、立方格子をモデルとして使用し、Cでシミュレーションプログラムも作成した。

 

プログラムが完成したころ、雑誌「炭素」に類似のシミュレーションプログラムがあるのを見つけた。発表時期からほぼ同じ頃に同じ事を考えていた人がいたことがわかった。

 

パソコンが16ビットから32ビットへ移行するときで、手軽にコンピューターシミュレーションができる環境ができた時期で有り、パーコレーションのシミュレーションに関する研究報告が増えてきた。

 

ある雑誌のコラムには、パソコンの普及でパーコレーションの研究が進んだ、と書かれていたが、これは認識違いで、30年以上前に数値解析で数学者達は基礎研究を完成させていた。1990年頃にはn次元空間におけるパーコレーションの研究が完了していた。

 

n次元空間のパーコレーションの研究は何に活かされるのかよく分からない研究であるが、真理を追究するのが科学なので、面白い研究であれば、実用性など無視してどんどん研究は進む。科学の世界とはそういうもので、その結果パーコレーションの不変の真理というものが見いだされてきた。

 

パーコレーションの世界で、この不変の真理とは、次元が高くなればなるほどパーコレーション転移の閾値の確率が小さくなること、また粒子のアスペクト比が大きくなればなるほどやはり閾値の確率が小さくなることである。そして、確率過程でパーコレーション転移は生じるので、閾値近傍では、物性のばらつきが大きくなる。

<明日へ続く>

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