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2013.09/11 科学と技術(50:ミドリムシプラスチックス2)

液晶用フィルムと言えばセルロースフィルムの独壇場であったが、最近ポリオレフィンフィルムがこの市場へ入ってきてセルロースフィルムメーカーは大変だと聞いた。ポリオレフィンフィルムはセルロースフィルムの製造工程で必要な有機溶媒を使用しない押出成形で製造されるのでLCAの観点から有利である。セルロースフィルムメーカーもメチクロ溶媒を使用しない押出成形を研究開発しているようで、特許がこの十年たくさん出ている。

 

粘弾性の性質を調べればすぐに理解できるがTACやDACは射出成形や押出成形が難しい材料である。しかし似たような構造だが同じ多糖類でもミドリムシプラスチックスの物性は大きく異なり簡単に射出成形が可能だ。MFRの値を見てもTACやDACが可塑剤を多量に用いた値よりも良いデータが得られている。

 

今年のセルロース学会ですでに報告されたが、世間の反応は今ひとつである。藻の培養技術は健康食品会社においてすでに商業生産の実績があり、(株)デンソーではバイオディーゼルの開発に取り組んでいる。ミドリムシは「肥だめ」でも育つのである。試しにPETボトルの側面を切り取って簡易育成容器を作り育ててみると良い。元気によく育ちすぐに増える。

 

ミドリムシの育成は小学生の夏休みの宿題には格好のテーマとなる。さらに中学の科学クラブであればこのミドリムシから多糖類を抽出することは簡単にできる。理科実験のテーマに未来技術のバイオリファイナリーを取り入れてはいかが。

 

ミドリムシと名前にムシがついているが、藻の仲間でありムシという名前は無視してよい。ユーグレナと言った方が耳あたりが良いかもしれない。栄養食品でユーグレナという呼び名を使うのは飲みやすくするためか。材料の名前に用いるとユーグレナプラスチックスとなるが、夕暮れのイメージよりもミドリムシプラスチックスのほうがバイオ感あふれている。

 

なぜ光をあててミドリムシを育てると1種類の多糖類が1個体あたり50%の収率でできるのかミドリムシの光合成における詳細な機構を知らないが、抽出して変性し利用する技術は、公知の方法で可能である。ミドリムシプラスチックスは科学の世界で考えても技術の世界で考えても面白い。

 

今週ミドリムシプラスチックスについて連載で書こうとしたが、都合により明日からはまたアイデアについて書く。但しここまで読まれてミドリムシプラスチックスに関心を持たれた方のお問い合わせにはお答えいたします。但し問い合わせは電子メールでお願いいたします。昨日電話がつながらなかった方にはお詫び申し上げます。

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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