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2013.09/12 科学と技術(51:アイデアを出すコツ7)

アインシュタインもニュートンも非科学的な方法で物理学の新世界を切り開いた。白川先生は学生が実験を失敗したおかげで導電性高分子を世界に先駆け発見することができノーベル賞受賞に輝いた。ヤマナカファクターも学生の度胸のある実験でそのヒントが見つかり、消去法で完成させた。科学的ではない方法で科学の大発見がなされていることに注目をすべきではないか。

 

科学的手順による問題解決をめざして50年以上前、旧ソ連の時代に研究されたTRIZやUSITを重視するのはなぜだろう。この方法で得られるのは科学的に導かれた当たり前の解決案であって技術的にできるかどうかの保証は無い。大切なのは技術的な問題解決案である。科学的に正しくても技術として意味の無いあるいは実現できない解決案も存在する。科学的に得られたことと技術的成果が等価という誤解がある。科学的に説明できないが技術として成立している例は多数存在する。ヤマナカファクターも4種類の遺伝子が見つかったときには科学的に説明ができなかった。その後この4種類の遺伝子について科学的研究を進めている状態である。このような手順の科学的研究を企業の現場で行っては問題なのか。

 

このような手順で行われることがある凡人の非科学的な技術成果を低く見るのはどうしてだろう。実際にアンケートを取ったことがないので少し説得力に欠けるが、アイデアが生まれる瞬間とは非科学的な行為の時が多いのではないだろうか。

 

30年間自ら考案したK0チャートやK1チャートを使用してきた。この方法は科学的ではないので300件弱の特許出願はすべて非科学的行為の成果といえる。会社では科学的思考プロセスが重視されたので、アイデアを考案後こじつけで科学的な論理を組み立て周囲へプレゼンテーションした。さも科学の成果のようにである。そうしなければ信じてもらえない風土である。だから学会活動も熱心に行った。しかしアイデアはすべて非科学的方法で考案した。

 

PPSと6ナイロンをカオス混合という生産性の高いプロセスで相溶させた電子写真用材料、半導体用高純度SiC新合成法、ガラスを生成して難燃化する手法、3種類の高性能電気粘性流体用粉体、耐久性の高い電気粘性流体その他数々の成果はK0チャートとK1チャートを用いて非科学的な方法でアイデアをひねり出した。実用化されたこれらの技術の中には未だ科学的に説明できていない現象も含まれている。

 

複屈折が大きくてレンズに実用化はできなかったが、ポリスチレンとポリオレフィンを相溶するアイデアは、実験を進める手順までフローリーハギンズ理論を意識しそのアンチテーゼとして考案した。この材料は偏光板に使用することは可能で、フィルムを延伸しそのフィルムでクロスニコルにすると暗くなる。会社で報告しても特許出願料が無いという理由で特許出願をあきらめたが、これは大切なアイデアとして今でも頭の中で温めている。この例のように科学を否定してアイデアを出す試みも行ってきた。

 

当然のことだが科学を否定するアイデアの成功確率は極めて低くなる。だからその確率を高める対策が必要で、それがK0チャートとK1チャートである。K1チャートから組み立てられる思考実験で、それまで思いつかなかったアイデアが浮かぶことはよくあった。また、直接業務とは無関係のアイデアも生まれることがある。

 

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