活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2013.11/28 混練技術の考え方

合成された高分子をそのまま使用するケースは少ない。ほとんどの応用分野では添加剤も含め何らかの化合物と混合して用いる。高分子と添加剤、あるいは他の高分子との混合では、合成時に添加したり合成後でも均一混合が可能な場合、例えばラテックス以外では混練機を用いる場合が多い。

 

混練技術についてアカデミアの研究者が少ないため実技経験者の知恵に頼らなければいけない分野である。このような技術で困るのは、混練した材料の経験が異なると考え方が異なる場合だ。例えば樹脂技術者とゴム技術者では水と油ぐらいに考え方が異なっている部分もある。退職5年間のわずかな経験でこのようなことを書くと叱られるかもしれないが、一流樹脂企業の技術サービスと激論した経験(注)からこの結論に至った。

 

混練時に働く力で重要なのは伸張流動と剪断流動であり、このあたりまでは意見の相違が無いが、ガラス繊維補強樹脂を混練した技術者はじめフィラーを分散した技術者と動的加硫や特殊な分散を行っている技術者、そしてゴム材料技術者ではプロセス設計の考え方になると様々な見解が出てくる。聞いていると、それぞれの材料がうまくいったときの経験を話しているに過ぎない。

 

ゴムや樹脂、あるいは射出成形用セラミックス前駆体を混練した経験から、ゴム材料技術者の考え方に軍配を上げたくなる。他の混練技術者が間違ったことを言っているわけではない。根底に混練がうまくいっていないときに配合を検討しても無駄であるという認識があるのかどうか、ということである。換言すれば樹脂の混練を行っている人で、混練に疑いを持っている人は少ない。しかし、ゴムの材料技術者はロール混練条件に不安を感じている人が多い。話していて分かるのである。

 

退職後の2年前たまたま学会でT社の樹脂技術者と話す機会があった。カオス混合を研究しているという。混練技術を検討するとこの技術にたどり着くのではないかと、初めて意見が一致した。写真会社に勤務しているときに出会っておれば、無理をして混練プラントを作ることもなかった、と悔しい思いをした。

 

話して気がついたことだが樹脂技術者の間で混練技術が見直されている気配を感じた。起業後しばらくは電池やミドリムシに注力しようとしたが、うまくゆかなかった。急遽混練技術に力を入れ始めたが、小さな仕事がいくつか舞い込むようになった。樹脂材料のプロセシングで困っている方は弊社へ相談されますとすっきりします。

 

(注)写真会社に在職中、ケミカルアタックが原因ではなく混練プロセスに問題がある、という指摘をケミカルアタックによる破壊ではない証拠とスの入ったペレットとともに示しても、D社の技術サービスはケミカルアタック説を主張し続けた。議論が平行線になったので、中国までD社の現場を見に行った。

 

案の定混練プロセスは管理されておらず、混練機の制御盤の温度が設定値を20℃以上はずれていても生産を行っていた。ペレットのスの原因は混練時の温度が高すぎたためと推定されそれをD社に説明したが、20℃程度は大丈夫、と混練の問題を認めない。そもそもペレットにスが入っていたりDSCに一部分解が進んでいるような兆候が見られても混練温度に疑問を持たないというのはおかしいと思うのだが。

 

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop