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2013.11/29 混練のシミュレーション

二軸混練機でスクリューセグメントの設計を行うときに、通常はシミュレーションソフトを用いる。ところが混練の機構さえ把握しておればシミュレーションソフトを用いなくとも山勘でもできる。それぞれのスクリューセグメントの役割さえ分かっていれば、そこそこのレベルまでゆく。

 

乱暴に聞こえるかもしれないが、次のような実績がある。外部メーカーのコンパウンドを購入して開発を行う方針だったあるテーマで、外部メーカーに頼っていては製品ができないと判断し、テーマの決められた納期3ケ月前に中古機を導入した。その時、混練を行うスクリューセグメントを山勘で決めた。それにもかかわらず、外部の一流コンパウンドメーカーよりも性能の優れたコンパウンドを混練できた。

 

もう少し具体的に表現すれば、外部のコンパウンドメーカーのコンパウンドでは押出成形で合格品を製造するにはかなりの調整が必要なため歩留まりが30%以下で、ひどいときには製品の電気抵抗の偏差が2桁以上あり、品質を満たした製品を製造できないこともあった。ところが山勘で決めた混練システムで最初に得られた成果は歩留まり70%以上で抵抗偏差は0.2桁というすばらしい値であった。

 

山勘で二軸混練機のシステムを立ち上げたのだが、最適化はタグチメソッドで行っている。しかし、その時スクリューセグメントを因子に入れていない。但し、回転数と材料の投入量を因子に入れている。内製化であり、コンパウンドの生産量は押出成形のタクトタイムに合わせれば良いので、最初からコンパウンドの生産性を犠牲にする覚悟を決めていた。しかし、幸運なことにタグチメソッドで余裕のある条件が見つかった。幸運と表現したが、二軸混練機の押出量について十分な装置を準備した(注1)ので当たり前なのかもしれない。

 

このテーマでは外部のコンパウンドメーカーの技術サービスに混練条件の見直しをお願いしても埒があかなかった。スクリューセグメントの設計にはシミュレーション始め高度の技術が必要とかエンプラの難しい材料なので混練り条件を決めるのに1年以上かかり大変だったとかいわれたが、3ケ月でできた事実を彼らはどのように説明するのか。所詮混練技術とはこのような側面を持っているのである。

 

それは新入社員時代に難しい樹脂補強ゴムの混練を行った経験から学んだ。指導社員から標準試料とその配合処方を手渡され、標準試料と同一物性のゴムを混練できるまで実験を始めるな、と言われた。事前にロール混練の原理や取り扱いについて一通り指導を受けたが、標準試料の混練手順については教えて頂けなかった。

 

指導社員がバンバリーで混練したマスターバッチがあり、それをロール混練で仕上げるだけの作業で、指導されたときの手順でロール混練して標準試料と同等のゴムを作ればよい、とだけ言われた。当方も初めての経験でありその程度の作業と思っていたら甘かった。

 

標準試料と同等の物性が得られるまで1週間かかったのだ。それもまわりの諸先輩の指導を受けながら悪戦苦闘して、である。理論派の指導社員が教えてくれたロール混練の原理など役にたたなかった。恐らく指導社員は混練が理論で伝わる技術ではないことを教えたかったのだと思う。諸先輩は「いじめ」だと言っていたが、標準試料の混練の難しさだけでなくロール混練にも流派があること、そしてある時間ロール作業を行って呼吸をするぐらい自然にゴムを扱えなければ良い混練ができない、という悟り(注2)のような世界を実体験し文章に表現できない多くの技術を学んだ。

 

(注1)中古機だったので選択の余地が無かったのは、やはり幸運かもしれない。ここは幸運なのか経験による成果なのか、読者に判断して頂きたい。

 

(注2)科学と技術の一番の相違点であろう。職人が身につけていてそれを文章でうまく表現できない技術もある。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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