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2013.12/08 成形技術と混練技術

加硫ゴムを扱う会社では、コンパウンドを自前で設計しているケースが多い。例えばタイヤ会社でコンパウンドを外注している企業は皆無だ。しかし、樹脂成形メーカーはコンパウンドを外注している企業がほとんどである。

 

それぞれにメリットデメリットがあるが、汎用樹脂のような高い混練技術が要求されないコンパウンドでは成形工程と混練工程が異なる企業の分業体制でもかまわないが、高度な混練技術が要求される成形体、すなわち成形体の物性が混練技術で左右されるようなケースでは、混練工程から成形工程まで一貫生産した方が好ましいし、差別化技術となる。

 

タイヤという商品は、混練技術も成型技術も高度なレベルを要求される商品である。その品質を維持するために両者の研究スタッフを抱えていなければ事業を展開することが難しい。しかしポリエチレン容器の成形業者は、成形機を備え付けて外部から安価なコンパウンドを購入すればいつでも事業を始めることができる。すなわちタイヤ事業は技術的な参入障壁が高い事業だが、汎用樹脂の射出成形事業は技術の参入障壁が低い事業だ。その結果、後者では製品の価格競争となるが、前者では市場の価格決定権は技術の高い企業にある。

 

また、複合電子写真機の開発担当となって知ったことだが、成形業者は樹脂のサプライヤーの技術サービスに依存しているケースが多い。成形業者のコア技術は金型技術にあるようで、他の成形業者が真似できない安価で高機能な射出成形体を製造することがミッションとなっているようだ。その結果、樹脂成形業界はコンパウンダーが成形業者の技術をサポートできる程度の研究開発スタッフを抱えている。

 

5年間日本のコンパウンドメーカーと交流して驚いたのは、成形事業者を如何に納得させるのか、という技術を一生懸命開発している。本来樹脂を丸め込んでうまく混練するのがコンパウンダーのミッションのはずだが、多くのコンパウンダーは、如何に現在供給している樹脂をそのまま使わせるのかという技術開発に終始している。少し混練条件を変えるだけでも性能が上がる可能性があっても現在の混練条件を維持しようとする。

 

数t/時間の量産技術で市場に供給しているのだから一人一人の顧客に対応出来ない、というのがその理由のようだが、その結果混練技術開発の進歩が止まったようだ。このような市場に新たな混練技術で参入したらどうなるか。特にABSやPC/ABS、TPEの分野では2成分以上のポリマーをブレンドする必要がある。

 

例えば、二軸混練機を改造しカオス混合可能な装置で混練したPC/ABSでは、ナノオーダーの均一な高次構造が観察されたが、市販品は構造のサイズが10倍以上、あるいは100倍以上異なっている場合もある。またゴム相の分散状態も市販品は不均一である。コンパウンドの高次構造が新しい混練技術では既存の商品のそれと明確に異なり、樹脂のレオロジー特性も異なっている。このような技術を導入したコンパウンダーが市場に現れたら、既存のコンパウンドメーカーは今までの混練技術に対する考え方を見直すはずだ。

カテゴリー : 一般 高分子

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