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2014.01/11 熱可塑性エラストマー(TPE)(2)

TPEは射出成形可能なゴムである。弾性体として高機能を要求されない部分に普及してきた。しかし、高性能を要求されるタイヤや免震ゴム、エンジンマウントには未だに加硫ゴムの製造プロセスが使用されている。ところが圧縮永久歪やその他の物性実現にTPEでは難しく加硫ゴムが使われてきた自動車ウェザーシールがTPEで作られるようになってきた。

 

30数年前樹脂補強ゴムを開発した経験から、「ようやくそこまで」という実感である。すなわち、加硫ゴムを置き換えたTPEは、TPVと呼ばれ、動的加硫技術を用いたれっきとした加硫ゴムである。TPVは、樹脂の世界で進歩してきたTPEの流れの中の呼び名で、樹脂補強ゴムというのは、ゴム会社で開発された樹脂が海で加硫ゴムが島になっている材料である。

 

すなわちTPVも樹脂補強ゴムも材料としてその高次構造は同じであるが、TPVが樹脂補強ゴムの性能に追いつくまで30年近くかかった、ということだ。

 

樹脂が海でゴムが島という高次構造が同じ材料でありながら、樹脂補強ゴムとTPVで性能差が生まれるのは何故か。プロセシングが異なるためである。前者は、バンバリーによるノンプロ練り、ロールによるプロ練りを経て加硫工程において加圧成形と同時に加硫反応を行うゴムである。後者は、二軸混練機で混練しながら加硫反応を行い(これを動的加硫と呼ぶ)射出成形で成形を行うゴムである。

 

30年以上前樹脂補強ゴムは、タイヤのビード部に「強靱で硬く柔らかいゴム」として実用化された。スーパーマンをキャラクターに用いてスーパーフィラーとしてPRしたところ、アメリカのプレーボーイ誌で不適切な表現として叩かれたぐらいに普及した。

 

このスーパーフィラーは、フェノール樹脂が海で加硫ゴムが島となった海島構造になっており、フェノール樹脂が3次元化しているので極めて硬い材料でありながらゴム弾性を示す。そして振動吸収もする。後者はゴムの重要な物性であり、樹脂補強ゴムにより振動吸収できる樹脂のような硬い材料が実現されたのである。樹脂補強ゴムが登場する前のタイヤのビード部の設計はゴムと弾性率が高い繊維の織物の複合材料で設計されていた。それが樹脂補強ゴム一つで製造できるようになったのだから、軽量化とコストダウンに寄与した。

 

この樹脂補強ゴムは開発されるやいなや、自動車用エンジンマウントへの応用が検討され、1年ほどで実用化された。そのとき島は加硫ゴムであったが、海はPP系のコポリマー樹脂の樹脂補強ゴムであった。弾性率は樹脂の結晶化度に相関して高くなり、必要な硬度のゴムを自由に設計できるようになった。

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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