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2014.02/01 ケミカルアタック(3)

ケミカルアタックはケミカル製品と樹脂の溶解度指数(SP)で決まる、という説明も樹脂の教科書に書かれていたりする。またそこに着目したケミカルアタック防止樹脂という怪しい特許も存在する。確かにSPあるいはχパラメーターに着目すればケミカルアタックを防ぐことは可能である。ただし、その値を分子構造から計算で求めた場合には痛い目に遭う可能性が高い。

 

さらに高分子の溶解の問題あるいは相溶の問題は、実は科学的に100%解明されていない。例えばχの大きい高分子を相溶させた経験がある。光学用樹脂のアペルは側鎖基が嵩高い構造をしている。Tgを高くするためにそのような構造に設計しているわけであるが、そのためこの空間にうまく入るように高分子を設計してやると、χが大きくても相溶させることが可能である。

 

15年近く前に様々な条件で重合したポリスチレンをアペルに混練したところ、16番目の処方で重合したポリスチレンを相溶させることができた。このポリスチレンを相溶したアペルは興味深い熱特性を示した。

 

二種の高分子が相溶したこの樹脂は、室温で透明であるが、80-90℃で白濁が始まる。これはポリスチレンのTgに相当する温度領域である。しかし、135℃前後で透明になり始める。この135℃というのはアペルのTgである。

 

この現象から分かるように分子の一次構造が特殊であるとSPやχパラメーターと無関係に相溶という現象が起きることがあるのだ。高分子のモノマー構造からχを定義し組み立てられたフローリー・ハギンズ理論は大変狭い現象を扱っている理論であるか、あるいは間違っている可能性がある。科学とは一つそれを否定する現象が現れたら再度理論の見直しが行われなければならないが、アペルで見つかった現象を知っているアカデミアの学者は少ない。

 

ケミカルアタックが発生した状態を油と樹脂のχパラメーターあるいはSPからうまく説明することができたとしても対策は実技で対応することが賢明である。現象を科学的に説明することと再発を防止する実務では目的とするゴールが異なるのである。再発防止策は技術的に現場に即して対応することが必要である(続く)。

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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