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2014.03/15 理化学研究所の会見について

今回のSTAP細胞の騒動について、理化学研究所の会見が昨日あった。まだ中間報告の段階だが、事実として分かってきたことは、若手研究者に科学の厳しさを指導していなかった(注1)、ということである。

 

理化学研究所の理事長野依先生は名古屋大学では鬼軍曹とまで陰で言われていた、科学に対する厳しい姿勢では評判の先生だった。当方が卒業研究をしていた研究室は野依研とも親しい関係にあり、当方を指導してくださったI先生は野依先生よりは厳しくないとご自分で言われていた。その野依先生より厳しくないI先生は、卒業論文の〆切前日に50報前後の英語論文の山(注2)をつきつけ、卒業論文の書き直しを当時4年生である当方に命じてきた。

 

当方も卒業したい一心で徹夜し、50報もの論文を参考論文として整理し、緒言や実験結果の考察の引用論文として反映し(引用箇所にはすべて正確に論文情報を添付したのは当然だが結構大変な作業である)、すべて卒論を書き直した。ワープロなど無い時代である。しかし20時間程度で完成したのには驚いた。人間必死になればもの凄い力が出るし、またその底力は1年鍛えられた結果でもあった。翌日I先生はできて当然、と言われ卒業論文を見直してくださった。

 

理化学研究所の会見を聞いていると、そのような厳しい姿勢がSTAP細胞論文作成に無かったようだ。小保方さんは当然のように安直に画像の切り貼りをして論文をしあげ、指導する立場の人もそれを許していた。

 

自称野依先生ほど厳しくないと申されていたI先生は、科学者という職業では厳しさを忘れてはいけないことを日々指導してくださった。だから〆切前日論文の山を渡されても粛々と手をぬくこと無く、その厳しさに真摯に応えることが当然と思って誠実に作業を進めた思い出がある。

 

先日S先生の最終講義の日にS先生の指導担当だったI先生もいらっしゃった。いつのまにか優しいI先生になられていた。しかし野依先生には今回の事件で昔の厳しさを取り戻して頂きたい。技術は機能に不具合があれば市場から厳しいペナルティーを被る。技術者は市場から常に厳しい評価を受けながら日々開発現場に臨んでいる。科学者は真理の前に自ら厳しさを課さなければ今回のような事件が起きるのである。今回の事件は単なる捏造ではなく厳しさの欠如から生まれたミスだろう。それでも捏造と騒がれるところが悲しい科学者の立場である。

 

(注1)「厳しく指導する」ことではない。「厳しさ」を教える指導が必要。

(注2)卒論に不足しているだろう論文を予めコピーしておいてくださった親切な先生である。優しさから生まれる厳しさが人を育てる。

カテゴリー : 一般

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