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2014.04/18 研究者や技術者の躾け

「非常に豊かな発想力がある反面、ある種のずさんさがあった。その両極端が一人の中にある」と笹井副センター長は、30過ぎの未熟な研究者の評価を述べた。しかし、データの扱いや実験ノートの書き方については、理系であれば最初の二年間の学生実験で学ぶ。また4年の卒業研究では、講座に配属され、厳しい指導の下に研究の掟を学ぶ、というのが普通の大学である。

 

40年近く前、学生の間でも評判の大変厳しい先生の指導を受けた。自分から進んでその様な先生を選んだが1年間その先生だけでなく、諸先輩にも叱られてばかりであった。器具の整理整頓だけでなく、洗浄後の状態の検査の仕方まで事細かく躾けられた。雑誌会ではレポートのまとめ方や説明の仕方まで厳しかった。おかげで打たれ強くなった。

 

大学院に進むことになったが、所属していた講座が廃止されることになり、大学院の2年間は別の講座に進学した。その時も学生に評判の悪い厳しい先生のところを選んだ。当初高校教師になるつもりであったが、技術者の夢を持ったのはその先生のところで学んだ2年間のおかげである。研究テーマではなく短い学生の期間の厳しい指導を求め講座を選んだが、教育費のコストパフォーマンスとして最高だったと思っている。

 

同じ授業料を支払うのである。一生懸命指導してくれる先生を選んだ方が得ではないか。未熟な研究者で問題になったのは、実験ノートにデータの取り扱いや論文の書き方である。これらは少なくとも大学4年間に当然躾けられていなければならない項目である。コピペをやってはいけない悪事であることは、初年度に学ぶ。なぜ論文に引用文献が書かれているのかも学生実験の時に参考文献とともに学ぶ。そして他人のレポートをコピペした場合には単位を出さない、ということも指導される。40年近く経った今でも、友人の「代返」をして叱られた記憶とともに残っている。

 

20歳前後というまだ感性の低下していない年頃の時に研究者や技術者になろうとする人は厳しい躾けを受けるべきである。特にデータの扱いや実験装置、器具の扱いについては徹底して躾けられるべきである。発想力や集中力は生まれながらの資質であるが、これらは指導されなければ身につかない事柄である。社会に出る前に早めに躾けられるのが良い。30歳でそれが躾けられていない、というのは異常なことなのである。今回のSTAP細胞の騒動は日本の高等教育の欠陥が原因で起きたのかもしれない。

 

30歳という年齢は、専門外(注)であっても半導体用高純度SiCのパイロットプラントをゴム会社で立ち上げた年齢である。普通の会社ならば未熟や専門外であることが許される年齢ではない。諸先輩のサポートを受けながら一人前の仕事が求められる年齢である。ちなみにゴム会社では現在でもこの事業は継続されている。

 

(注)大学4年の卒業研究は、シクラメンの香りの全合成で、大学院2年間のテーマはリン系無機高分子の合成だった。無機材質研究所へ1年半留学し、SiCの結晶や焼結技術について学び、ゴム会社へ戻って速度論の研究を企画し学位を取得した。

 

カテゴリー : 一般

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