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2014.04/27 フィルム成形と押出機(3)

フィルム成形の単軸押出機で、L/Dの小さな押出機が使われたときの問題は、ミキシングゾーンが短いために高分子融体の均一性が上がらないことである。この問題は設備導入前にすぐに確認できる場合は良いが、多くは導入後の後悔となる。後悔しても、設備は高価なのでL/Dの大きな押出機に交換することができず、それで何とかしようとする。

 

フィルム成形に用いる押出機のL/Dは中国で会ったドイツ人が言っていたように余裕を持った仕様が良いと思われる。余裕があれば何か問題が生じたときに設定温度の工夫とスクリューの設計で乗りきることが可能だが、余裕の無い設備では、トラブル対策に限界が生じる。L/Dが25と35の設備では、若干35の方が高価だが、もし選択できるのであれば35あるいはそれ以上の設備を購入しておくのが賢明だろう。

 

L/Dに余裕があるとミキシングゾーンの工夫が可能である。ミキシングゾーンの考え方については定説は無いが、例えば、バリアミキシングと呼ばれる方式のミキシングヘッドを用いた場合には、比較的軟化しやすいポリマーに対して積極的に未溶融ポリマーを残す条件、すなわち高吐出条件をとってポリマーをミキシングヘッドに導き一気に溶融を完了させるとともに固体ポリマーの溶融熱を利用して低温の溶融体を作り出すノウハウがある。

 

ポリエチレンで低温の融体を得たい場合にはこの考え方は有効である。しかしポリエチレンで成功した手法が他のポリマーでも有効と限らないのが本技術の難しさである。また、問題が見えにくい場合には過去の事例にとらわれ、問題解決できなくなるケースも存在する。

 

例えばフィルムに散見されるブツの場合には、その原因の特定が難しい。ブツで正体不明の場合(注)には未溶融のポリマーを疑ってみるのは良い着眼点であるが、その対策になってくると考え方は多種多様である。当方は、溶融しやすいようにコンパウンディングで対策を取っておく、というのが正解と思っているが、混練工程を他社にゆだねている場合にはそれが難しく対策として取れない。

 

退職前に担当した業務では、コンパウンドメーカーにいろいろと要望を出していたら、技術営業から素人には分からないよ、と言われしかたなくコンパウンドを自分で開発することになった。中古の混練機を購入し考えていた方法で混練してみたら一発で問題解決できた。もしコンパウンドメーカーに協力してもらえないときには、問題解決のために混練工程を取り込む必要がある。短い押出機を用いる場合には、混練工程は重要である。

 

(注)フィルムのブツあるいはボツは様々な原因で発生する。ここで述べた未溶融ポリマーや気泡、フィラーがはいっていたならその凝集物など多種多様である。ブツ対策にはまずその分類が重要でブツの分類を行うと対策が見えてくる。面倒でもまずブツの分類が対策の第一歩である。

カテゴリー : 連載 高分子

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