活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2014.04/29 フィルム成形と押出機(5)

将棋の世界で異変が起きているという。プロ棋士がコンピュータ相手に将棋で負け続けているそうだ。その様な状況で、将棋がコンピュータにより完全に解明されたらどうするのか、と羽生プロに尋ねたら「その時は桂馬が横に飛ぶとかルールを少しだけ変えれば良い」と答えたそうだ。

 

終盤力が勝負の分かれ目といわれていた将棋は、やがて中盤力の研究が中心になり、現在は序盤が勝負になっているという。将棋の世界は弊社が運営する未来技術研究部のホームページ(www.miragiken.com)で紹介したような逆向きの推論のように解明が進んでいる。押出成形も結論に当たるフィルム材料に着目したならば、押出機や金型だけでなくコンパウンドまで研究を遡る必要がある。

 

フィルム成形では、溶融しやすいPETやPP、PEなどのフィルム成形は、押出機で何とかなった。しかし、PPSなどのエンプラのフィルム成形やカーボンを分散した半導体フィルムの成形など次第にその成形技術が難しくなってくると、将棋と同じように序盤、すなわち分子設計やコンパウンディングが重要となってくる。

 

しかし、昔書かれた押出成形の教科書にはコンパウンディングとフィルム成形の関係については書かれていない。押出機で話が始まっている。しかし、押出機だけではフィルムで発生するトラブルを解決できないケースがある。押出機の工夫だけでは解決できず、混練機から金型まで一連のシステムとして捉えなければ、良好の品質のフィルムを成形できないケースが出てきた。

 

しかし押出成形技術の解明はまだ完璧にされていない。射出成形は金型で樹脂の表面は制御される。ところが押出成形では、金型のリップを樹脂が出た後も樹脂の表面は冷却されながら変化している。表面だけでなくフィルムの中心部も変化しているが温度測定可能な表面に比較し、中心部の変化は複雑で解明が難しい。

 

カーボンを分散した樹脂でフィルムを押出成形すると、表面と中心部で体積固有抵抗が異なることから冷却過程の高次構造変化が複雑になることを予想できる。コンピューターでシミュレーションをおこなうとすれば、パーコレーションの概念をどのようにプログラミングするのかが問題となる。押出成形は簡単に見えるが将棋の世界よりも難しく、いまだノウハウが要求される分野である。

 

 

カテゴリー : 連載 高分子

pagetop