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2014.09/26 高分子の難燃化技術(10)

当時夜中の11時まで実験をやっていても残業代を申請していない。高純度SiCの事業立ち上げまでの6年間死の谷を歩いたが、この時にも残業代の請求は0である。いまなら労働基準法で大きな問題になっただろうが、当時はおかまいなしである。

 

ただ、研究開発を担当していて残業代が欲しいと感じたことは無かった。それよりもゴム会社には大学よりも優れた研究開発設備が充実している点に感謝していた。それらが無料で自由に使えるのである。手続きをふめば学会発表も可能であった。

 

この2年半後のことだが、難燃化技術の研究開発から生まれた高純度SiCのテーマでは2億4千万円の先行投資を受け、専用の電子顕微鏡まで買うことができた。さらに超高温TGAを開発してSiCの反応速度の研究ができて、この研究をもとに学位を取得できた。

 

労働基準法違反以外に今ならばパワハラや逆セクハラと騒がれるような状況もあったが、会社への貢献と自己実現の目標が明確だったので、それを辛いと感じなかった。この頃の職場環境は様々な問題を抱えていたので、その後のサラリーマン人生で問題が起きたときにこの頃を思い出すことが多い。

 

多くの企業は市場で競争原理に基づく厳しい環境で戦っている。当然企業内はその影響を受け厳しい職場環境が出現する。その中で個人はどのように対処しなければいけないのか。

 

高分子の難燃化技術を担当していたときに、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの開発、硼酸エステル変性フォームの開発、そしてシリカ変性フェノール樹脂を開発して、これらで体得した技術を活用して前駆体法による高純度SiCの新合成法を完成させた。

 

職場環境は劣悪でも、会社への貢献と自己実現を忘れなければ、個人は組織の中で活用されたのである。その組織で貢献と自己実現が難しい、と感じたときに個人は静かに去ることを心がければ新聞沙汰になるような事件は起きないと思われる。

カテゴリー : 一般 高分子

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