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2014.12/07 非科学的問題解決事例-PENの巻き癖解消(3)

短時間アニールのPENフィルムは簡単にできたが、なぜライバル各社は実験をしなかったのか。理由は簡単である。単純にTg以上で熱処理してもフィルムがしわしわになるからである。

 

ここで物理化学の基礎事項を説明する。物理のパラメーターには容量因子と強度因子という分類方法がある。容量因子とは、容積とかエネルギーのように形が変化しても測定された値は一定となるパラメーターを意味し、強度因子とは力のように測定点が変わると変化する可能性があるパラメーターである。

 

温度というパラメーターは強度因子であり、系が平衡状態に無いときには、測定点が変わると測定された値が変化する。実験を行うときに系のエネルギーを知るために温度測定を行うが、その計測された温度からエネルギーを推定する方法はあくまでも系が平衡状態にあることが前提になる。

 

温度というパラメーターについてこの基礎事項を忘れて実験を行う人が多い。理系の人ならば大学の教養課程で必ず学ぶ内容である。物理あるいは化学の教科書の最初に必ず一言触れてある。

 

企業の実験では意識して実験条件を管理しない限り、系が非平衡の状態で計測が行われるケースがほとんどである。その時計測されている温度は、必ずしもエネルギーを推定するために適切な値とはならない、換言すれば温度を計測しエネルギーを精度高く推定するためには系の平衡状態の確認を厳密に行わなければならない。

 

もし系のエネルギーを推定するために温度計測が必要な場合には、必ず系が平衡状態になっていることを確認するのか、あるいは温度計測を2点以上行い精度を高める努力をしなければいけない。

 

このような基礎的なことを案外忘れている。忘れていながら科学的なことにこだわり、非科学的ヒューマンプロセスを排除するのは技術の問題解決の姿勢として好ましくない。現象を捉えるときに科学的側面以外に非科学的側面からの考察方法があることを知れば、高温短時間アニールのアイデアに気がつくはずである。

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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