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2014.12/13 非科学的問題解決事例-PENの巻き癖解消(9)

予備実験では容積が小さいので簡単にできたが、企画が通ってからは大変だった。試作プラントでその再現実験を行うためにタグチメソッドを行ったのだが、最適条件で得られたフィルムの巻き癖は予備実験で得られたフィルムの性能よりも低く目標未達となった。

 

基本機能にクリープを用いて実験を行っていたので、科学的視点からはもう少しまともな結果になっても良いとクビをかしげつつ、この技術を実用化するときに、テストプラントの結果を用いていては工場で再現できない可能性がある、と直感的に感じた。

 

タグチメソッドは、設計段階における小スケールの実験結果が生産段階で再現する、というのがセールスポイントである。しかし故田口先生との議論や品質工学学会誌の初期に掲載されたタケトンボの事例を読んでいたので、すぐに工場を使ってタグチメソッドを行う決断ができた。

 

すなわち実験室で最適化データを揃える努力をしないで工場試作を行う仕事の進め方である。さすがにこの決断の結果で社内調整するには時間がかかった。

 

まず工場長から社内の品質規格を無視していると、簡単に馬鹿にされ相手にされなかった。次にセンター長からも実験室でもっと頭を使え、とも言われた。

 

センター長に、実験室でいくらやっても時間がかかり、さらにそこで得られた結果を工場で再現する自信が無いが、工場実験で実用化の条件を探ればそのまま実用化でき開発コストを下げられる、というプレゼンテーションを行って、ようやく前に進むことができた。

 

2日間行った工場実験では元巻き二本を使い、最適条件を見つけることができた。工場で最適条件を決めたので得られた条件はすぐに実用化できるレベルだった。

 

驚いたのは、巻き癖は解消されたが、粘弾性特性が企画段階で得られたデータと少し異なり、Tg以下の処理で得られるフィルムの特性と大きく異なる値を示したことである。

 

他社の特許に抵触しない技術ができあがったと喜びたかったが、科学的な裏付けが欲しいと思った。特許出願後、外部の有識者にデータを見てもらい議論したところ、ライバル会社の特許に書かれた粘弾性特性の評価方法が、実は科学的実験として正しくない条件であることが分かった。

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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