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2015.01/26 混練プロセス(21)

バンバリーや二本ロールで樹脂を混練する人はあまりいないと思うが、ぜひ一度試してほしい。例えばオープンロールで樹脂を混練すると、時間はかかり、樹脂によっては面倒な現象が起きる。しかし目的とする温度で丁寧に練り上げることができるので、特定の温度で混練された樹脂サンプルが必要な時に重宝する。

 

15年ほど前にパルプとポリエチレンの複合材料をロール混錬で製造し、異臭のしないパルプ樹脂複合材料を開発した。二軸混練機やKCK、バンバリーで混練すると、どのように温度調整しても異臭のする複合材料しかできなかった。しかしオープンロールで混練したところ、パルプの熱分解物が人間の鼻では感知できないレベルの量になった。

 

これはオープンロールだから臭気が揮発した、というよりも混練温度を管理することができた効果である。すなわち二軸混練機やKCK、バンバリーミキサーなどの密閉系混練プロセスでは、温度計の指示温度よりも10℃以上高い温度がサンプルにかかっている。実際にどの程度の温度がかかっているのかはスクリューの構造にもよる。

 

二軸混練機のシミュレーターによれば、指示温度よりも20℃以上も高くなる場合もある。もちろんこれは二軸混練機のスクリューセグメントの設計や運転条件、混練時の樹脂粘度にも依存し、ケースにより大きく異なるが、二軸混練機の設定温度よりも高い温度に樹脂がさらされていることは確かである。

 

パルプ樹脂複合材料は、異臭の発生を抑えるために温度を低く設定しようとする剪断発熱が多くなり、混練時に加熱が不均一になりやすい。その結果いくら低温度にしても部分的にパルプの熱分解温度以上になるところができて、異臭が発生する。ゆえに密閉系の混練機を使用した場合には異臭の発生を抑える混練条件を見出すことができなかった。

 

シミュレーションの結果では最適点が見出されたが、実際に混練してみると複合材料の混錬をパルプの熱分解温度以下で混練することができなかったので、剪断発熱が予想以上に多いと推定された。新入社員の実習経験から想定内の出来事ではあったが驚いた。

カテゴリー : 高分子

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