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2015.03/18 イノベーション(37)素材メーカーの場合

東レの社内風土は知人から聞いても、技術者にとってうらやましい風土である。これは経営陣の努力の賜物だろう。炭素繊維のテーマは、それを担当した技術者とそれをサポートした中間管理職が一体となって貢献した成果だと思う。

 

経営陣はドラッカーのマネジメント論に述べられたイノベーションの意図から少しはずれて、貴重なシーズを事業として成功に導く努力をした。そしてその努力の過程で、マネジメント体制を整備した功績が生まれた。
 
実はこの功績がイノベーションを成功させるために最も重要なことだ。技術としての成功だけではイノベーションを成功させたことにならない。マネジメント体制の整備があって初めてイノベーションは成功に導かれる。
 
これはゴム会社における高純度SiCの事業を見ると理解できる。二億四千万円の先行投資でスタートした技術開発は、社長交代と業界3位の会社を6位のゴム会社が買収するという事業環境の変化で会社の中ではお荷物テーマとなる。
 
しかし経営幹部は技術開発の担当者を励まし続けた。但し、中間管理職は冷ややかな目でテーマを眺めているだけだった。やがて死の谷を歩いてきた担当者は転職を決意する。
 
この転職の決意に、マネジメント体制の整備への願いがあったことは言うまでもない。他社とのJVが立ち上がりながら、技術開発の中心人物が退職するという事態になり、研究開発本部ではあわてて研究開発体制を作ることになり、その結果事業として成功し、ゴム会社はこの技術で日本化学会化学技術賞を受賞する。
 

すなわち、技術が生まれた後、それを事業として成功させるのには、マネジメント体制が極めて重要であり、とりわけ中間管理職のマネジメントがその成否を左右する。

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