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2015.03/31 なぜ今科学者のデータ捏造が増えてきたのか(1)

STAP細胞の騒動では、学術誌への投稿論文だけでなく学位論文の捏造も問題になった。捏造だけでなく、コピペも指摘され、研究者の資質も問題にされた。学位論文の不正は、日本で博士課程が生まれたときからあったそうなので、新しい事件ではないだろう。当方も某国立大学でその審査のひどさを実体験した。

 

学位論文は、研究者の能力試験のような側面があり、学術論文とは少し性格が異なる。また、偏差値の高い大学の学位論文でもひどいものがあるので、これは一定の水準を維持しようと努めている学術誌とは別物だろう。

 

博士の肩書きを名刺につけながら、学位論文のタイトルを尋ねると答えられない人もいるくらいなので、ご自分の学位論文を他人に見せられないような博士もいるかもしれない。STAP細胞の騒動では、学位論文の主査を務めた教授が雲隠れした噂まで出たのだから、捏造以前の問題も学位論文には存在する。

 

中部大学のように、入り口から出口まで徹底して厳しく学位審査を運営している大学がどれだけあるのか知らないが、厳しい審査のプロセスと荘厳な授与式で授与された学位論文は誇りさえ感じている。入試の不正は社会問題になり罰せられる例もあったりするが、早稲田大学の学位審査では大学が罰せられた話を未だに聞かない。

 

科学界の論文は難解で大衆には無関係、と思われていたが、STAP細胞の騒動では、コピペやつぎはぎなど誰でもわかるいい加減さが露見し、科学に携わらない人まで第一線の科学者の論文がどのようなものであるか誤解するに至った。

 

性善説に基づいて、云々といういいわけがなされていたが、本来仮説設定して行う実験そのもに、怪しい側面があることに科学者は気がついているのだろうか。技術では繰り返し再現性あるいはロバストの高さという厳しい関門がある。

 

その昔、ゴム会社で、世界的な賞を受賞しカミソリのように頭が切れるものすごく偉い部長がいた、という噂を聞いた。その人はレオロジーの理論屋で、仕事では実験内容とその結果の整理の仕方まで指示してきたという。そしてグラフの点を見て、理論から外れていると、理論通りの位置のデータが得られるまで何度も実験をやらされた、という。

 

ゴム物性にはばらつきがあるから多少はずれてもかまわない、などと言うと、いいわけを言うなとしかられたそうである。たまたま学会の懇親会でお顔を拝見したが、もう優しいお顔の老人になられていた。

 

 

カテゴリー : 一般

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