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2015.04/07 実験のやり方(6)

仮説の正しさを検証するために実験を行う、というのは科学的姿勢として正しいし、実験のやり方として科学の時代では常識だろう。しかし人類が誕生してから続けられてきた本能的な実験のやり方もある。それは機能を実現できるかどうかを直接確認する実験方法である。最近ではカラスもこの方法を行い、硬いクルミの殻を割って実を食べるのに成功している。カラスでもできる方法(注)だから誰でもできるはずだ。

 

界面活性剤を入れた電気粘性流体で耐久試験を行うのも、耐久試験で増粘した電気粘性流体に界面活性剤を添加する実験も結果は同じだ、と工学博士のプロジェクトリーダーから言われたが、恐らく提案を認めたくない感情的な発言だったと思われる。なぜなら正しくは科学的に異なる実験となる。また、機能を確認するという技術の立場でも、履歴が異なるので同一の結果が得られる科学的保証もない。

 

しかし、てっとり早く直接機能を確認するには、後者の方法が優れている。科学的にも技術的にも結果が異なるような方法だが実験そのものが簡単になり時間を大幅に短縮できる。また、後者の方が簡便に機能の実現可能性を確認できるので大量に実験ができる。少なくとも同じ時間内に50倍以上も情報を取り出すことが可能である。実は技術開発では、仮説を検証するための実験よりも、目標とする機能に関する情報を如何に大量に取り出すことができるのか工夫された実験が優先されると思うし、優先すべきである。

 

もちろんこのような実験では真実が不明確になるペナルティも覚悟しなければならない。しかし真実を追求する実験は、機能が正しく発揮されてから行えばよい。そうすれば大量の情報が得られた後なので現象に対する見方も鋭くなり、最初に立案した仮説もより洗練されたものを立案しやすくなる。

 

電気粘性流体の増粘の問題では、てっとり早く機能を確認する方法を用いて有効な機能を発揮できる界面活性剤を見出し、見つけられた界面活性剤を用いて検証実験を行い、技術として完成させた。特許作成時間も含め、1ケ月もかからなかった。界面活性剤では問題解決できない、という否定証明には1年と言う時間が費やされたが、てっとり早く機能を確認するという実験方法ではカラスの行水のごときスピードだった。またいかに優秀な「できない」ことを論じた科学的否定証明でも「できた」という真実の前には、はかない存在となる。

 

(注)10年以上前にNHKテレビで紹介されていたニュースでご存じの方も多いのでは?

カテゴリー : 一般

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