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2015.04/08 実験のやり方(7)

耐久試験で増粘する電気粘性流体の問題は、簡単な実験から見出された界面活性剤で解決ができたが、そこで選ばれた物質は界面活性剤として市販されていない材料だった。しかし、その分子構造には親水基と疎水基が存在した。ただ、それは界面活性剤の用途に使用されていない物質だった。モデル計算でその物質のHLB値を計算し、先に多変量解析で得られていたマップへプロットしてみた。すると、報告書の最も検討されていなかったところにプロットされたが、その近くには、すでに検討された界面活性剤のプロットも存在した。

 

そこでお宝がありそうに思われた、検討が手薄な領域の材料について徹底して実験を行ったところ、分子量が機能に影響していると思われる傾向が見えてきた。多変量解析のマップでは、単純に第一主成分と第二主成分で界面活性剤の分布を見ており、化学構造との関係がわかりづらい。第一主成分に対して寄与が大きいのはHLB値であり理解しやすいが、第二主成分は曇天はじめ様々な因子の寄与が大きく材料設計に使いずらいマップである。

 

新たに見出された分子量とHLB値の両者を軸にして界面活性剤の分布を調べてみると、主成分分析の結果のようにきれいな分布にはならないが、効果のあった界面活性剤周辺では、意味がありそうな傾向が見られた。しかし、その科学的な意味は文献を調べても研究例が無く、「科学的」な理解はできなかった。

 

これは、界面活性剤の機能について科学的に解明されていない問題が存在することを示す重要な現象である。界面活性剤の教科書を読むとすべてが解明されているような記述だが、このように未だに解明されていない現象も存在するのだ。この事実、すなわち科学万能の今日においても科学ですべてが解明されているわけではない、ということを技術者は強く意識すべきである。

 

科学で解明されていない問題を扱う時に実験のやり方が特に重要になる、と思っている。科学で解明されている問題では、科学に基づく仮説を立案し、誰でも科学的方法で解くことが可能である。実験など、わざわざやらなくても答えが得られる場合も多い。しかし、科学で解明されていない問題を科学に未熟な技術者が科学的方法で解くのはやめたほうが良い。指導者のいるところでやらなければSTAP細胞と同様の混乱を引き起こすか、否定証明で間違った結論を導き出すのか、あるいはーーーである。

 

科学で解明されている現象を扱う問題と解明されていない現象を扱う問題の区別については、信頼できるアカデミアの研究者に相談すれば分離できるので、もし開発を担当した領域に科学で未解明の現象が存在するとわかったならば是非弊社に相談していただきたい。解決方法をご指導させていただきます。

カテゴリー : 一般

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