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2015.04/27 科学の重要性(12)

PPSとナイロンの相容については、東工大の扇澤教授が面白い研究をされていた。この先生のご研究は多岐にわたっているが実務に直結したテーマをうまく選ばれており、助手の時代からその研究内容に注目してきた。

 

特許にはうまく再現できない事例が多いが、科学の世界の論文は真理を追究しているので再現性を期待できる。この理由で、彼の科学論文に書かれた実験も信頼でき、その中の一つの実験、4,6ナイロンとPPSの相溶現象をその場観察する実験から得られる考察は正しいはずである。

 

さっそく先生にこのご研究の話を伺いに行ったら、χが小さいんでこの実験を行った、と言われた。そして4,6ナイロンではうまくいくが、χの大きい6ナイロンではうまくいかない、とも言われた。

 

すなわちPPSと6ナイロンは科学の世界では相溶しないことになっていることを確信し、これを相溶させる技術を退職前に実現しようと決心した。もしこれが成功すれば、技術が科学を追い越した事例になる。

 

ゴム会社の新入社員時代に指導社員が教えてくれた究極のカオス混合技術を開発することにした。また、これは指導社員が当方に出してくれた宿題でもある。指導社員の話が正しければ、そもそも究極の混練は高分子の分子レベルまで作用し進行するので、χが大きくても相溶現象は生じるはずである。

 

中間転写ベルトの開発を始めた頃、指導社員の母校である京大からカオス混合のシミュレーション結果が発表された。偏芯二重円筒でモデル的に生成するカオス混合をシミュレーションしたものだが、それが大きなヒントになった。

 

科学の成果は真理であり、その真理を基に思い描いて生まれた技術は、例え科学的な証明が難しくても実現できるはずだ。また、そこに科学の重要性があるとともに新しい技術の科学的ではない生み出し方がある。(www.miragiken.com をご覧ください。)

カテゴリー : 一般

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