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2015.05/09 問題解決(8)

問題解決において気をつけなくてはいけないのは、時間の扱いである。システムに時間の要素は入ってくるが、「時間」は情報ではない、あるいは時間を制御することはできないのは当たり前のことである。

 

具体的には、何かプロジェクトで問題が発生したときに、「時間が無いからできない」、という回答は、この仕事はやりたくない、と言っているのと同じである。「時間」というものに理由を求めてはいけないのである。やらなければいけないことであれば、納期を遅らせてでもやらねばいけない。

 

納期をその日あるいはそのときであることが妥当であるのか議論することは可能だが、「時間」というファクターを議論しても何も生まれない。「時間」に答えを求めることは、「やらない」とか「解決しない」という答えと同じなのだ。換言すれば、どうしようも無い状況ならば、時間が過ぎる前に、「解決しないという意志決定」をすれば良いのである。

 

PPS中間転写ベルトの開発で、コンパウンドの内製化を部下のマネージャーへ伝えたときに、今からコンパウンドの技術開発をしていたら間に合わない(時間が無い)、という答えが返ってきた。確かに数年外部のコンパウンドメーカーと開発してきて解決できなかった問題をコンパウンドの内製化で短期間に解決できる、と考えるのはおかしい。しかし、これは、時間を情報として扱っている見方である。

 

もし新たな技術で問題解決できることがわかったならば、どうするか。そもそもPPS中間転写ベルト開発テーマを継続するのかどうか、という問題で考えなければいけない。何も解決の手段が無いならば、半年前の今、技術開発は不可能という結論を出さなければいけない。

 

新たな技術で問題解決すると意志決定したならば、納期を動かしたり、仕事量を削ったりする調整を行えば良いのである。そもそも意志決定は成功を予測してチャレンジする行動なのである。

 

ところが、コンパウンドの内製化を行おうと関係部署の調整を始めたときに、ISO9001(品質マネジメント)の壁にぶつかった。幸い分社化されていたので、ケミカル関係の子会社が別会社となっていた。この会社にコンパウンドの生産を任せれば、外部のコンパウンドメーカーと同等の扱いができて、ISO9001の問題を解決できる。

 

オブジェクト指向的に表現すれば、カプセル化で問題を解決したことになる。時間を制御することはできないが、このように時間のファクターをカプセル化してシステムに影響しない工夫はできる。このシステムでは、発注という入力で、コンパウンドが簡単に出力される。

 

参考までに、社内でコンパウンドの生産工場を立ち上げるというシステム選択をした場合について説明すると、ISOに基づく手続きが発生し大変になる。これは開発を成功させるコンパウンドという出力を得るために、多くの入力をしなければいけないシステムを選択したケースである。

 

このように時間は制御もできなければ(無制御性)、失われた時間を取り戻すこともできない(不可逆性)、また情報のように伝達することもできない。しかし問題解決の時のシステムの選択で、時間をカプセル化できる。

 

すなわち、ビジネスプロセスにおける問題解決法では、時間をうまく処理する工夫が重要である。ビジネスの問題解決で、いきなりスケジュール表から入る人がいるが、それは下手な仕事のやり方だ(注)。まず問題解決されたときの姿から入り、そのときにシステムがどのようになっているのか考えてゆくのが上手な仕事のやり方である。

 

(注)マネージャーは時間管理を行うのが仕事、と勘違いしている人がいる。32年間のサラリーマン生活で細かいスケジュール表を作成したのは、QCの研修でアローダイアグラムを学んだときぐらいである。マネージャーはテーマの成功確率を左右するイベントの管理をしっかり行うことこそ重要である。ビジネスプロセスでは、研究開発部隊といえども予期せぬ飛び込みの仕事が入り、スケジュールの作り直しなどは日常茶飯事だった。

カテゴリー : 一般

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