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2015.05/10 問題解決(9)

PPS中間転写ベルトの開発では、前任者から状況を伺ったときに、○○○という一流のコンパウンドメーカーからコンパウンドを購入しているので、コンパウンドの改良は簡単だ、と告げられていた。

 

技術サービスと面談すると、確かに科学の視点で優秀なコンパウンドメーカーであり、相談内容に対して教科書に忠実な回答が返ってきた。教科書通りの回答であれば当方も知っていたので、このまま教科書通りの開発を続けていたなら10年かけてでも問題解決できない、とその場で判断できた。

 

科学一本槍のメーカーは、今の時代、秘密も何も無い丸裸の状態と同じである。二軸混練機のスクリューセグメントをノウハウという人がいるが、教科書通りに組めばそこそこの混練機ができる。今の時代のノウハウとはヒューマンプロセスをうまく活用できる技術力である。これは教科書に書かれていない、実績のある弊社だけが指導可能なノウハウである。

 

教科書準拠ではできないことがわかっていたので、新しいアイデアを提案したところ、素人はダマットレ、となった。外部のコンパウンドメーカーに発注し、コンパウンドを得る、というシステムで開発をしていたので、ここへ新しい入力として技術アイデアを入れれば簡単に問題解決できる、と判断し単身赴任したのだが、入力できる変数は一つしか無い不便なシステムだったので目の前が一瞬暗くなった。

 

発注と新しいアイデアの両方の入力を受け入れてくれる新しいシステムを探す必要があった。そこでグループ内の別カンパニーの子会社をシステムとして選んだのである。ただそのシステムには、機能が何も無い状態だったので、機能を作りあげる作業が必要だった。ただ、類似機能がその子会社には存在したので、類似機能を活用するために投資を行えば良い、と考えた。

 

その子会社の類似機能は高分子合成システムで、高分子の変性も行っていた。ただし二軸混練機を使用してドライで変性する技術(機能)を持っていなかった。二軸混練機の機能では、高分子を入力すると混練されて変性された高分子が出力される。すなわち、二軸混練機を購入し、ソフトウェアーをそろえれば一流のコンパウンドメーカーと同等以上のシステムができる。入力変数の種類と数を自由に制御できるので一流のコンパウンドメーカーのシステムより、見かけは数倍優れている。

 

ソフトウェアーについては、成功を予測できる非科学的方法を考えていた。すなわち投資するだけで問題解決できる見通しが得られた。残った課題は投資をどうするかである。混練プラントを新たに作るとなると2億円は最低必要になる。すなわちPPS中間転写ベルト開発の問題の姿は、時間でも技術でもなく、お金の問題に変わった。

 

 

カテゴリー : 一般

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