活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2015.05/16 STAP問題、ES細胞の窃盗容疑

STAP問題で小保方氏作成のマウスからES細胞が見つかったが、このES細胞がどこから混入したかは謎のままだった。おそらくこの謎を解く目的で、元理研上級研究員がES細胞の窃盗容疑という問題で訴えることを思いついたのだろう。科学の問題を法律で解く(注)、という手段を選んだのだ。

 

ただこの告発には当方は賛成しかねる。現代の科学のレベルで論理的に導かれる犯人が明確であり、その犯人が真相を語っていないからである。なぜマウスからES細胞が見つかったのかは、実験に関わった方がご存じのはず。しかし、誰もそれを語らない。それは語れない理由があるから、と推定している。

 

組織内の人物が情報を知っていることがわかっており、それを組織外に出そうとしない意志が働いている内容について、法的手段を使い強引に情報を引き出そうというのは、例え知る権利があるからと言っても判断に迷う問題である。

 

マウスからES細胞が見つかった理由は、若山研究室のES細胞を盗み出し、悪意があってマウスへ入れたから、という前提で今回の告発が成されている。しかし告発しているのは、研究室外の人物である。なぜ研究室内部の人が告発しないのか。告発できない理由があるのかもしれない。

 

公の研究機関の事件なので、すべて明らかにしなければいけない、という考え方を理解できないわけではないが、なんともやりきれない告発である。もし科学的に完璧にSTAP細胞の存在が否定されているならば、今回の告発に当方も賛成したかもしれないが、STAP細胞の存在については、まだ、科学的に易しいと言われている完璧な否定証明ができていない。追試をやってみたが、できなかった、すなわちある実験だけが否定された状態である。

 

ES細胞の意図的な混入に科学的な意味があった可能性も有り、もしそうならば、今回の告発は明らかにその意図を持った人を糾弾している告発になるのではないか。悪意ではなく、それが科学的意味のある行為だったなら、今回の告発は科学の芽をつぶす行為となる。真相を知っている人物は、早急に事実を明らかにした方が良いだろう。

 

科学の問題は、あくまでも科学で正すべきで、もしそれができないならば、科学を進歩させなければいけない科学者に責任がある。今回の告発を、自然科学の研究における失敗について法的手段で訴える時代になった、ととらえると、性善説を前提としている科学の世界が終焉したことになる。残念である。

 

(注)科学の時代を「科学ですべてを明らかにできる」と誤解している人がいるが、科学で理解できない現象のほうが未だに多いのである。例えばPPSと6ナイロンの相容やポリスチレンとポリオレフィンの相容を技術で実現しても、教科書に書かれているフローリー・ハギンズの理論に反する事実なので信じてもらえないだけでなく評価もされない。例えそれが商品として成功していても科学で解明されていなかったら科学者は信じないのだ。

カテゴリー : 一般

pagetop