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2015.07/10 シリコーンゴム(3)

シリコーンLIMSは、1980年代に急速に普及したシリコーンゴムの技術である。ポリウレタンのRIMとよく似ているが、ポリウレタンと大きく異なるのは、低分子量のシリコーン化合物をA液とB液の二成分にわけ、それを混合して用いる点である。

 

A液とB液の二つの成分をスタティックミキサーや二軸混練機、一軸混練機などで混合して射出成形したり、注型後加熱して成形する。ミラブルタイプのシリコーンゴムよりも生産性が高いので一気に普及した。また、シリコーンメーカーの間で激しい技術開発競争が起き、特許には各メーカーの棲み分けがくっきりと描き出されている。

 

例えば信越、東レ/ダウ、モメンティブの御三家のLIMSは、A液B液にそれぞれ特徴があり、その結果各社技術の限界が存在する。どのような限界があるのか弊社に問い合わせていただきたいが、科学と技術の違いを学ぶのに良い題材である。すなわち科学では真理は一つだが、技術における機能実現の方法は一つではない、という典型例である。

 

多機能複写機の定着ローラにおけるシェアは、上記の順番であり、信越化学がトップである。LIMSの設計に無理が無い点が優位に働いているのだろう。しかし、死角は存在し、他の二社はそこを攻めれば勝てる可能性がある。単身赴任早々福建に出張しなければいけなかったのは、まさにその死角が原因だった。

 

シリコーンポリマーの分野は、原料を安価に調達可能な御三家の寡占状態だが、最近伸びているシリコーン製食器のように素材の市場は今でも拡大しているので、新規参入可能な分野に思える。また、20世紀に開発された、特許の権利が切れた技術を用いても物性の良いシリコーンゴムを提供可能なLIMSを開発可能である。

 

中間転写ベルトの開発を行いながら、単身赴任という気楽さもあり、粘弾性の測定装置を買い込んで研究をしてみた。ワークライフバランスが叫ばれているが、研究が趣味の場合に仕事との境界が怪しくなり、バランスの取り方が難しくなる。単身赴任は家族と離れて寂しい環境であったが、家族に気兼ねなく研究のできる時間がたっぷりあった五年間でもある。シリコーンゴムは辛い単身赴任の状態で一服の清涼剤の位置づけとなった。

 
 
 

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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