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2015.08/15 まず、モノを持って来い(2)

「まず、モノを持って来い」手法で研究は否定されたのか?むしろ逆に研究は推奨された。但し、モノができ開発がスタートしてから研究が許されたのである。開発がスタートしていないテーマについて研究予算は付かなかった。
 
高純度SiCの技術では、モノは無機材質研究所でたった1週間未満の実験でできあがった。しかし、研究は開発とマーケティングを行いながら2年間続けられた。
 
すでにモノができあがっていたので、研究テーマを絞ることは容易だった。2000万円かけて超高温熱天秤を開発し、SiCの反応速度論を研究したのは、生産条件の妥当性確認と前駆体の品質管理技術開発の目的だった。この超高温熱天秤の開発ではBN部品の開発も一発勝負で行っている。それがなければ機能しなかったからだ。
 
この研究テーマで学位を取得したが、それはU取締役に勧められてのことだった。研究をなぜ行うのか、それは暗黙知を明確にするためだ、というのがU取締役の持論だった。
 
ゴム会社在職中にT大で学位取得を目指していたが、残念ながら審査の時期と転職がかさなり、モノ持って来いではなくカネ持って来いと教授に言われたので一度学位をあきらめた。しかし転職後もU取締役は激励してくださったのでC大学で10万円以下という安価な学位審査料で取得できた。
 
なぜ学位にまとめるような研究が必要になるのか。それは、技術開発だけでは、技術の伝承が難しくなるので形式知にして伝承するのである。しかし、すべてが形式知に転換できるわけではないので、その部分、すなわち暗黙知として残される部分を伝承するためにも研究が重要となった。
 
技術の伝承は、報告書だけでは難しい。ゴム会社では、技術を極めた人材をフェローとして手厚く処遇する人事施策も整っている。技術の暗黙知は人材で伝承する以外に方法は無いのである。人材流出に歯止めをかけていない企業では技術は枯れてゆく。

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