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2015.08/23 混練の知性(1)

混練を形式知で記述しようとするときに、装置と混練される材料との関係が問題となる。すなわち高分子材料は、その種類により一次構造が異なればレオロジー特性も異なる。しかし、溶融状態のレオロジーについてはいまだ学会で議論されているレベルである。
 
材料側の物性変化が一義的に定まらない状態で装置と材料の関係を議論するとなると、科学的にどのように論理展開すればよいのか。そこで材料モデルを考案し、近似解を得られるように問題を解くわけだが、ここで怪しいことが起きる。
 
約10年にわたり、樹脂の混練技術に携わってきた。そして新しいカオス混合装置を開発し、そこから創りだされる新たな材料の特許出願もできた。この装置は日本と中国でそれぞれ稼働している。日本で量産に使用されている装置を第1世代とすれば、中国のそれは思想の進歩した第2世代である。
 
第1世代を開発したときに、社内のデザインレビュー(DR)と呼ばれる、ステージゲート法のゲートに似た仕組みを突破するためにシミュレーション技術を駆使した。そのときはDRを通したい都合で、あたかも形式知がそこにあるかのような説明をしてきた。
 
混練のシミュレーションなど普通に計算するとうまく適合した結果など出ないのだが、シミュレーションそのものを実際に合うようにパラメーターを設定して結果を出してきた。すなわち通常粘弾性の測定データを入れるところを、現実にあうパラメータの値を入力し、結果とあわせこんで計算したのだ。
 
実際にあわせて計算しているので、何のためのシミュレーションだ、というつっこみは起きるかもしれないが、実際に計算しているので捏造には当たらない。データを説明しやすいようにシミュレーションで得られるきれいなグラフィックを利用したかっただけである。
 
そのようなシミュレーションのやり方で分かったことはいくつかあるが、スクリューセグメントを設計するために行う混練機の温度シミュレーションは、実践知によく適合すると感じた。もっとも実践知が蓄積されるとシミュレーションを行わなくてもスクリューセグメントの配置から概略温度変化は予想がつくようになりシミュレーションなど不要だが、実践知が無いときには、シミュレーションされた温度データは頼りになるはずだ。
   

カテゴリー : 一般 高分子

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