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2015.09/24 少女漫画家「東村アキコ」

昨日朝6時30分から、NHK「インタビューここから、東村アキコ」を見て感心した。技術者というものをうまく語っていたからだ。もちろん彼女は技術者ではなく今旬の漫画家である。しかし彼女の語る漫画家としての自己描写は、技術者そのものだった。彼女は語った。「私は自分が見ていないものを描けないんですよね」と。
 
彼女の漫画に登場するキャラクターに、創造したものは無いという。すべて実在の人物、あるいは自分が見たキャラクターを漫画にしているという。創造したキャラクターでは、漫画の中で登場人物がうまく動いてくれないという。そして、彼女は自分には0からモノを創りだすことができないんですよね、と、さらっと語っていた。
 
彼女の独創性に関して、さらにエピソードが語られた。彼女は絵が好きで美大へ進学を決めたという。しかし、美大へ進学を決めたとたんに、自分が何を描きたいのかわからなくなったという。さらに美大の授業では油絵の時間は地獄だったという。同級生は、皆キャンパスに創造性を発揮しているが、自分にはそれができず悩んだと告白する。
 
そして、卒業制作の油絵が映し出されたのだが、そこには無表情の女性3人が描かれた独特の世界があった。インタビュアーが、これは東村さんの学生時代そのものだったんですか、と質問すると、そうなのかもしれないと答えた。そして彼女は卒業しOLになるのだが、子供のころから大好きだった漫画家になる決意をして、現在の職業になったのだという。
 
このインタビューで、彼女は、自分には独創性が無い、と語っているようにみえるが、実在の人物を抽象化して漫画の世界でうまく機能させるのは、あたかも技術者が自然現象から有用な機能を抽出し、製品を創りだす創造のプロセスとよく似ている。
 
独創性を「無から有を創りだすこと」と誤解している人がいるが、具体的なオブジェクトを抽象化する作業、すなわち部分をモデル化(これも抽象化である)し最適な機能として取り出すプロセスも、過去になかった新たな機能を生み出すという意味なので独創性なのである。彼女は、自分の体験から従来なかった漫画の世界を描いているので独創性のある漫画家として成功したのだ。
 
技術者の中には、0から新技術を創造可能な優秀な方もおられるかもしれないが、大半の技術者は、自然現象を観察し、そこから人類に有用な機能を抽出する、あるいは他社のリバースエンジニアリングからヒントを得て新たな機能を創造するなど、彼女が言うように「自分が見たモノ」から新たな機能を創造しているのである。そして、これも特許を取得できれば独創と呼べる。

カテゴリー : 一般

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