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2015.12/20 AVに見るコモディティー化(1)

高度経済成長から始まり、バブルがはじける直前には成熟化したオーディオ(A)ブームは、いわゆるコモディティー化したように見えたのだが、その後登場した液晶ディスプレー(V)のコモディティー化による低価格化、そしてメーカーの苦境という流れと比較すると少し様子が異なる。オーディオ業界の今を考察すると、形式知と実践知、暗黙知の存在及びその働きが見えてくる。
 
オーディオの技術は、ビジュアル機器の技術革新とそのブームの陰に隠れながらAVとして発展し、アナログからデジタルへの変換が進んだ。そして、デジタル化したビジュアル機器のコモディティー化の流れの中でAVメーカーの再編もあり、この30年間に激動の変化をした。
 
その中で、昔のオーディオファンは、オタクとして生きた化石のようにそのまま残っている。そして、今ささやかなオーディオブームのようなものが起きつつある。レコードが見直され、そのレコードを聴くためのプレーヤーの新製品も登場した。書店にはアナログという、そのままのタイトルの雑誌まで登場した。
 
デジタル技術全盛の中でオーディファンの正統派は、未だにアナログなのである。1ビットデジタルアンプがもてはやされたこともあったが、真空管をシミュレーションするアンプが登場したりして、アナログ回帰現象がデジタル技術の進化とともに一つの流れになった。
 
例えば、ギターアンプを始めとして楽器の音を増幅するアンプは真空管式のマーシャルブランドが今でも強いと聞く。コンサートに行くと「Marshall」の文字を舞台で見つけることができる。一方で真空管製造メーカーの撤退で、真空管そのものを秋葉原で探すのも大変な作業となる時代である。
 
マーシャル以外のアンプメーカーでは、真空管式の旧式アンプをモデリングしたトランジスターアンプが売れているという。これをデジタルとアナログの融合の成果として進歩と見るのか、デジタル化の流れの中で部品調達が難しくなった真空管をデジタル技術で補っている苦肉の策、と見るのかは難しい。
 
一ついえることは、形式知でアナログからデジタルへの変換を行ったが、人間の感性という暗黙知まで科学技術で満足させられなかったということだ。そのため、オーディオの世界ではアナログが今の時代に見直され、ささやかなブームとなっている。
  

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