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2016.01/18 21世紀の開発プロセス(6)

(注)ヤマナカファクターは4本のDNAで構成されているが、なぜ4本必要なのか、とか、現在見つかっている4本の組だけしか存在しないのか、など科学的に解明されていない事柄が多い。しかし、細胞を初期化できる「機能」として、非科学的方法で取り出すことに成功している。モノを創りだす、という行為である技術は、科学が誕生する前から存在していた。科学が生まれる前でも、ゆるやかなスピードであったが技術は進歩していた。ゆえに非科学的方法でもモノを創りだすことは可能であり、それを試してきた経験から、科学はモノを創りだす確率(効率)を上げるが、科学的に解明されていない現象からモノを創りだすことが苦手である。また、不可能かもしれない。20世紀に科学は著しく進歩し、それとともに技術も過去にないスピードで進歩したが、技術開発における科学的方法の問題も見え始めてきた。
 

<本日の記事>
イムレラカトシュによれば、科学における証明で完璧にできるのは否定証明だけだそうだ。確かに仮説を設定し、実験を行っても必ずその実験が成功する保証はない。否定証明が目的の実験ならば成功できなくてよい。STAP細胞の騒動では、「とにかくSTAP細胞を一つ作ればよいから」と記者会見で言っていた科学者がいたが、追試にすべて失敗し、STAP細胞は存在しない、という結論になった。
 
ところで、iPS細胞のヤマナカファクター(注)について、非科学的方法で発見されたことがTVのインタビューの中で語られている。そこで語られた、24個の遺伝子を一つの細胞に組み込むという操作自体も常識外れの実験であるが、それを学生はいとも簡単に実行している。このセンスが、形式知の整備されていない分野では特に重要であるが、科学の時代では、これを評価しない人は多い。
 
技術開発では、自然界に潜む有用な機能を取り出し、実体として機能させ、新しい価値を作り出さなければならない。さらに21世紀の新たな動きとして、市場という人工の世界も自然界と同様に扱う必要性が出てきた。科学では自然界のモデル化という方法により形式知を生み出してきたが、今日の技術開発ではモデル化が難しい世界からも新たな機能を取り出し、新たな価値を生み出さなければいけない時代になった。
 
科学の重要性は、21世紀も変わらないと思われるが、科学一辺倒であった20世紀の開発プロセスを見直す必要があるのではないか。少なくとも科学による形式知の範囲だけで行われる技術開発では、モノができない可能性以外に今日の企業間の競争で勝つことも難しくなる。
 
例えば、液晶TVや太陽電池などの先端商品が瞬く間にコモディティー化し、「亀山ブランド」さえも電気店からいつの間にか消えたことを教訓として思い出していただきたい。仏壇店に行かない限り、亀山ブランドを見ることができない状況は、形式知の占める割合の高い技術では、例えそれが高度であっても、コモディティー化のスピードがますます速くなると言うことだ。
 
これは、高度に発達した情報化社会が、形式知をすぐに陳腐化させるためだが、材料の世界では新素材のコモディティー化サイクルとして以前から指摘されていた。そして、素材メーカーは、形式知以外の実践知を埋め込みしやすい部材産業へ転身し成功している。
 

カテゴリー : 一般

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