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2016.01/24 21世紀の開発プロセス(11)

ゴム会社の異色事業である高純度SiCを基にした半導体冶工具の事業は、セラミックスフィーバーが日本で吹き荒れた時代に2億4千万円の先行投資がなされ、スタートしている(注1)。その後、6年間いわゆる死の谷を歩き、住友金属工業(株)小島氏に出会って、JVを開始し、事業として立ち上がっていった。
 
以前にも書いたが、1980年代の社長方針である(1)電池、(2)メカトロニクス、(3)ファインセラミックスの3本柱の中で1本だけが現在でも生き残り、事業として継続されているのだ。
 
(1)と(3)は、日本化学会から技術賞を受賞しており、科学技術としても認められている。(2)は、ERFやラバーアクチュエーターなどの技術を用いた新事業で、当方が新規事業を担当したときに、2年ほど年上の方が始められた。その方は志半ばで病死された。
 
(1)は、ポリアニリンを正極に用いたLiポリマー電池で、世界初の実用化だが、Li二次電池の講演会では、なぜか紹介されない場合が多い少し残念な技術である。この仕事もERF同様に少しお手伝いをしたが、お手伝いの最中は、高純度SiCのテーマはパイロットプラントはできたが市場が無いために、どん底状態で、テーマを中止するかどうか研究所内でもめていた。
 
そして当方がお手伝いしている時に、電池事業は日本化学会から技術賞を受賞し、その勢いで電池開発のリーダーから、ファインセラミックス研究棟(FC棟)内の実験設備をすべて廃棄して建物を明け渡せ、と通告された。
 
当方は、社長決裁が下りているなら見せて欲しい、と回答したところ、電池のお手伝いから解放された(いわゆるプロジェクトをクビになった)。その直後、メカトロニクスの中心テーマになっていたERFの耐久劣化問題が起きたので、翌年のボーナス査定のネタを得るためにその問題の解決策を1週間で提案した。しかし、FC棟を明け渡せ、という話が研究所で出てきたことに危機感を持ち、以前この欄で書いたような、ERF用の三種の粉体を企画したのだった。そして非科学的方法で瞬時に製造(注2)し、研究グループのメンバーへ提供した。
 
ERF用の傾斜組成の粉体は、FC棟の設備で数キロg程度製造することができた。すなわち、無機機能性微粒子を創り出す技術が基盤技術として育っていたのだ。この粉体の量産成功で、その後FC棟を明け渡す話は研究所内で出なくなった。
 
残念なのは、電池プロジェクトは日本化学会から技術賞を受賞後1年ほどで電池事業を辞めてしまったことだ。Li二次電池用の正極や負極、そして電解質のアイデアを当方は幾つか持っていた。そして、ホスファゼン技術は伝承されLi二次電池の電解質用難燃剤は、しばらく事業継続されたが、今は日本化学工業から販売されている。
 
(注1)日本化学会化学技術賞の資料などで公開されているように、この事業は、当方が無機材研で1983年に出願した特許第1557100号と特許第1552729号の斡旋を受ける形でスタートしている。ゴム会社で生まれた技術を無機材研で出願することになった経緯については、過去の活動報告で公開している。簡単に表現すれば、育つかどうかわからない、今にもひながかえりそうな卵を無機材研でひよこまで育てたからである。
(注2)この開発手法も弊社の研究開発必勝法である。

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