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2016.02/04 科学者は知識労働者である(2)

エジソンは19世紀の技術者で、天才であるとともに奇人としても知られている。しかしエジソンの弟子アチソンについては奇人と言う話は伝わっていない。SiCがエジソンの発明であることは偉人伝にも書かれているので、エジソンとアチソンの師弟関係は良好だったのだろう。αSiCの製造方法がエジソン法ではなくてアチソン法となっていることからそれが伺われる。
 
おそらくエジソンは自分の指示で実験をやらせていたアチソンの成果として認めたのだろう。当時の発明でエジソンによるものとされる品々は多いがアチソンによるものについて当方はSiCしか知らない。SiCの発明の逸話は有名で、ダイヤモンドを人工合成したかったエジソンは、ダイヤモンドは炭素でできており、高温度でダイヤモンドができる、という科学の知識を得ていた。そして、るつぼで炭素を加熱していたら偶然ダイヤモンドのような硬い物質ができたので、コランダムをもじってカーボランダムと名付けた。
 
コランダムに似た名前を付けたのは、カーボランダムが大変固い物質だったからだ。恐らく実験をやっていた時のアチソンの頭には反応式ではなく$マークが浮かんでいたと思われる。カーボランダムは後にSiCであることが明らかにされたが、使っていたるつぼがシリカ製であったことが幸いした。アルミナだったならSiCよりも柔らかい物質となっていた。
 
エジソンがダイヤモンドを作ろうとして偶然SiCを発明した話は有名で、当方は小学校の時からカーボランダムを知っていた。ただ、それが弟子のアチソンによる発明であることを知ったのは、大学でアチソン法を習ってからである。カーボランダムの発明物語を読む限り、エジソンもアチソンも科学者ではなく技術者である。
 
高温に加熱すると硬い機能を持った物質ができる(注)、という古典的知識と、ダイヤモンドがカーボンでできているという知識を組み合わせて人類に有用な新しい研磨剤を創りだしたのである。また、新しい知識を獲得しその利用の仕方も知っていたので知識労働者でもあった。科学の時代の技術者や職人は多かれ少なかれ科学の知識に触れそれを活用するので、皆知識労働者である。(続く)
 
 

(注)セラミックスの語源であるケラモスは高温度で焼き固めたモノという意味である。

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