活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2016.04/12 高分子の融点(2)

そもそもガラスの定義は、非晶質でガラス転移点を持つ物質、と無機の教科書には書かれているが、高分子の教科書でこの定義に触れていない場合がある。高分子ならばガラス転移点を持つ、ということが常識化しているためだろうか。
 
この常識が、そもそもなぜ高分子はガラス転移点を持たなければならないか、とか無機ガラスは高分子ではないだろうか、という疑問を埋没させてしまう。
 
1970年代末に無機高分子研究会が高分子学会に設立されたが、この無機高分子研究会の設立は10年遅すぎたと思っている。1960年代に無機ガラスの研究がかなり進み、ガラス工学という分野が生まれていたからである。
 
無機高分子研究会の設立が遅れた原因とこのガラス転移点の理解は無関係ではなく、高分子研究者のガラス状態に対する当時の理解が遅れていたため、と思っている。だから当時ガラスの定義をご存じない高分子の研究者が堂々と授業をできた。いまならば大問題である。
 
ちなみにガラス転移点を持たない無機物質をどのように物理的に加工してもその物質をガラス化することはできない。そもそも、金属のガラスが誕生したのは20世紀末なのだ。ガラス転移点を持たない無機物質をガラス化することは大変なことだったのである。
 
ところで1970年前後登場したアモルファス金属はアモルファスであり、ガラスではない。高分子が容易にガラスになることができたのは、やはりその一次構造が長い紐状だったからで、高分子がガラス転移点をもつ、ということを正しく理解することは高分子研究者にとって基本の「キ」であり、技術者には心眼の視点を正しくするために重要な作業である。

カテゴリー : 高分子

pagetop