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2016.05/01 26日の三菱自動車記者会見(3)

ランサーエボリューションの開発中止は、おそらく三菱自動車が開発体制の見直しを行った結果だろう。軽自動車について燃費訴求車の燃費目標変更を2011年2月に行った、と記者会見で述べられた。その後5回に渡り燃費目標の変更が行われ、当初26.4km/lだったのが5回の見直しで2013年2月に29.2km/lまで目標が引き上げられた。
 
これは、すでに市販されたダイハツムーブの値29.0km/lを意識してのことである。ご存じのようにダイハツはトヨタの子会社でトヨタの支援を受けながら軽自動車業界でトップを走っている。かたや三菱自動車は、日産へのOEMと併せてようやく30%弱の市場占有率であり、三菱自動車自身では10%以下のシェアーとなっている状況だ。
 
すなわち、新車開発の企画段階で立てた燃費目標が、新車開発を行っている間にライバルの技術がどんどん進歩し、それを追いかける形で燃費目標を開発しながら上げていった状況を見て取れる。
 
しかし、ここで疑問が出てくる。なぜ、最初に思い切った目標に設定できなかったのか、という問題である。完全に市場予測が間違っていたのである。
 
これは勝手な推測だが、思い切った目標設定ではなく5回も目標変更しなければいけなかった背景には、マネジメント手法としての目標管理があり、科学的に確実に達成可能な目標設定を心がけた結果ではないか。それは役員の説明の中にもうかがわれた。
 
すなわち、5回に分けて燃費目標を変更した流れについての質問に答え、3回目に燃費目標を28.0km/lに設定したときには、ハードウェアーを目標達成可能なように盛り込んでいた、と回答している。そしてこの3回目の目標にあわせてエンジンなどの設計図の出図を行った、という。
 
もし、担当者の業務について、その目標管理の都合から科学的に達成可能な目標を設定しながら技術開発を行っていたとしたら、技術開発のマネジメントが稚拙である。ちなみに現在のハイブリッド車も含めて排気量と燃費の関係を求めて行くと、軽ならば2011年の時に思い切って35km/lの目標設定をすべきだったろう。
 
このようなハイブリッド車とガソリンエンジン車とを同列に扱う目標設定は非科学的であり、設定値として無意味だと言う人がいるかもしれないが、思い切った目標設定により、思い切った技術開発が行えるのである。技術は科学とは異なる人間の営みなので科学的に確実な目標ではなく、意味のある夢の目標が重要である。
 
もし科学で予測可能な目標を設定して技術開発を続けることが好ましい姿とするならば、将来の技術開発シーンでは人工知能の奴隷となった人間の姿が見えてくる。例え非科学的な目標であっても市場が求めているならば、そこにチャレンジするのが人間である。「あっと驚くタメゴロー」的発明はそのようなときに生まれる。
 
記者の質問の中に「役員が無理な目標を設定したのではないか」と燃費不正が組織ぐるみで行われたような印象を誘導するおかしな質問があった。製品仕様については、実現可能な現実的目標を設定しなければいけないが、技術開発目標は、意味のある世界一の目標をいつも設定すべきである。ただし記者会見で、企画に書かれた製品仕様を開発目標と勘違いして役員が発言していたとしたら、当方の厳しい感想については、お許し願いたい。

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