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2016.05/02 26日の三菱自動車記者会見(4)

4回目に目標変更されたときには、タイヤの転がり抵抗低減などの改良効果を見込んでおり、5回目は技術的に可能と判断されるエビデンスがあったので、シミュレーションで目標値を決めたという。また、開発が進み燃費を上げる技術的手段も多数出来てきたから数値を怪しいと思わなかった、というコメントも会見で出された。
 
一連の燃費目標変更に関する説明から、次のような想像ができる。すなわち3回目までの燃費目標設定変更は、開発初期段階で製品開発においてよくある話で、企画段階の目標に対して市場動向を踏まえ、開発初期段階のまとめとして各性能目標値を見直したのである。
 
そして実際に図面を引いてエンジン等を試作するときに、再度2013年の市場動向を予測し、製品性能の各目標値を設定し直す。これが3回目である。
 
開発後期では、実際にエンジンはじめボディーなどを発売に間に合うように試作し、生産段階に移行できるかどうか、実車テストなどを繰り返す。そして、燃費性能に余裕があれば、目標を引き上げることもあるだろう。これが4回目となる。
 
4回目までは、製品開発の手順から、その変更が行われたとしても仕方がないのだろうと記者会見の説明を聞いていて納得した。実際に4回目までは、エビデンスも有り不正ではない、と胸を張って説明をされていた。
 
しかし、ダイハツのムーブが上市されてその29km/lという燃費に開発陣は驚いたらしい。この値を見て、最終段階で5回目の燃費目標の変更を行ったという。
 
昨日書いたように最初から市場のトレンドを把握し、科学的に達成可能な目標値ではなく、ダントツトップになれる、その結果それを実現するアイデアが無いので非科学的とはなるかもしれないが、思い切った目標設定をしておればこのようなことにはならなかったはずである。
 
技術開発における目標設定は、仮に非科学的であったとしても、開発が終了した時点で1番になっている目標を設定すべきである。この1番になっている目標を設定できる能力も技術力となる。いくら非科学的な目標と言っても荒唐無稽な目標設定では、技術開発のモチベーションはあがらない。納得性のある1番という目標設定である。
 
かつて、国のプロジェクトの開発目標を演算速度一番としたコンピューター開発で、二番ではだめですか、と質問した大臣がいたが、技術開発の意味がわかっていない。最初から二番を目標するのであれば、技術開発をやめてライセンスを購入する道を選ぶほうがコストが安くなる。技術とは自然界から機能を取り出し生活の利便性を向上しようとする人間の営みのなかの行為であり、今の時代十分すぎるぐらいの技術があふれている。二番や三番の技術を開発してみても誰もそれを欲しいとは思わない。今という時代は、一番になれる技術開発が求められているのである。

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