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2016.05/15 日産自動車が三菱自動車を傘下に

日産自動車が三菱自動車へ30%以上の出資をするという。想定されたシナリオだがおそらく三菱自動車の技術者は大変だろうと思われる。「技術の日産」の傘下にはいるのである。
 
その昔、日産自動車の技術者と一緒に仕事をしたことがある。若いときだったのであまり憶えていないが、その時上司が、日産自動車には研究所が二つあって、今一緒にやっている連中と仕事を進めてもモノにならない、だから一度テーマを中断する交渉をしようと話していた。
 
実際テーマは中断されたが、その後の再開も無かったので、恐らく、二つの研究所は、前工程と後工程の関係で、前工程の研究所は可能性研究(FS)を進めているところだったようだ。雲をつかむようなテーマも並んでいた。
 
上司はコストダウンを図るために大量消費できる分野の実用化を急いでおり、後工程の研究所と交渉をしたようだが、相手にされなかったらしい。当方も担当していて、これは自動車用に実用化できない、と思っていたので日産自動車の後工程の判断は技術的視点に基づき出されたと思った。
 
確かに大量使用でコストは下がるが、その他の実用上懸念される点について科学的に大丈夫だと言われても、当方には不安が残っているテーマだった。一応自分たちで実車試験まで行ってはいたが、そのテスト結果には幾つか問題が出ていた。
 
ただそれらの問題については、実際の自動車の設計者から見てどうなのかを知るために、前工程の研究所と共同研究開発をしていたのだ。しかし、そこからあがってくるデータは自分たちで集めたデータと同じデータばかりだった。おそらく日産自動車社内でも議論はされていたと思われるが、科学的基礎データ以上の情報は頂けなかった。
 
そのような状況で、後工程の研究所からは共同開発を断られたのである。この出来事は、日産自動車の技術経営の特徴という印象で今でもよく憶えている。当方の直感と同じ判断が出されたから、というよりも、恐らく前工程の研究所と後工程の研究所とは社内で議論がされていたはずだ。
 
だから、たとえ科学的に機能が発揮されることが証明されても、日産自動車は技術の視点で厳しい判断をする会社、というイメージを持っていた。科学的にできそうに思えても、技術的に実用化は難しいと予想される技術は存在し、実技データが少ない段階では技術屋の心眼を働かせないとそれは見えない世界である。
 
逆に科学的にできないと予想されても、技術屋の心眼でゴールが見えたなら、そこへ到達するために自然界からうまく機能を拾い上げようと努力する傾向がある。PPSと6ナイロンを相溶(注)させて実用化した中間転写ベルトは、そうした成果である。また、科学の無い時代に発展した技術では、科学の判断など無く開発されている。
 
(注)フローリー・ハギンズ理論では相容しないと結論される。
 

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