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2016.05/16 研究開発の進め方

三菱自動車燃費不正問題で開催された複数の記者会見における回答から自動車産業における研究開発の進め方が見えてくる。
 
1980年代にアメリカで普及し日本に導入されたステージ-ゲート法(以下SG法)はどの産業でも使用されているようだ。しかし、その進め方、審議の仕方は産業ごとにあるいは企業ごとに異なると思われる。三菱自動車では役員が出席しない審議のゲートもあるとのこと。
 
30年間の研究開発人生でゴム会社と写真会社の二社を体験し、写真会社では写真フィルム開発や電子写真いわゆる複写機開発というそれぞれ異なる技術分野の商品の開発も体験した。それぞれの事業で研究開発の進め方は異なっていた。
 
写真会社ではSG法の導入は無かった。しかし、電子写真に用いる中間転写ベルトの開発では、デザインレビューと称するゲートが存在し、SG法のような進め方がなされていた。しかし、その審議方法は、ここでは書けないが、あまり適切な審議とは思えなかった。よくないから短期間にコンパウンド工場建設を行えるような仕事の進め方ができたともいえるが(この意味で、本当はよかったのか?)。
 
ゴム会社で、まったく異分野となる半導体用SiCの研究開発をスタートできたのはSG法が導入されていなかったおかげである。会社の50周年記念論文に提案してもボツになり、昇進試験の答案に新事業の夢として書いても0点をつけられたり(ただし翌年は同じ答案で100点になっている)散々な経緯があって、無機材質研究所における5日間の研究で会社の2億4000万円の先行投資が決まった。
 
これは無機材質研究所でちょっとした騒動になったが、STAP細胞の様な騒動ではない。留学中に会社の昇進試験に落ちた研究員のモラルアップのため許可された、1週間だけという制限付きの自主研究で大発明が完成した騒動である。真っ黄色の高純度粉体が5日間の実験で見いだされた簡単なプロセスでできたのである。それも回数で示せば、たった一回の実験で。
 
0点をつけられた昇進試験答案に書いた内容の方法で実験をした、と会社の人事部長に報告したら、会社も大慌てになった。ただし会社の研究所だけは、意地でも相手にしなかったという。
 
しかし、無機材質研究所のほうでは話がどんどん大きくなっていきそうな気配がしたので、人事部長に相談したら、すぐに会社へ戻ってこい、ということになった。
 
このあたりの経緯は書きにくいことばかり(注)だが、結局無機材質研究所で基本特許を書き、それをゴム会社が斡旋を受ける形でゴム会社の研究開発がスタートしている。
 
STAP細胞と異なるのは、再現の良い技術として出来上がっていた、という点である。その後最適化実験等いろいろ行ったが、無機材質研究所で行われた実験条件が最も良かった。この時いわゆるアジャイル開発という研究開発の手法を思いついた。ご興味のある方は問い合わせてほしい。
 
(注)会社の研究所では、反対者が多かった。現在でも事業が継続されている状況から、その時のことを事細かく書いたら傷つく人も多い。ただし経営陣の支援は現在まで事業が継続された力であると同時に当時も研究所で一人で頑張ることができた力でもある。会社には十分に貢献したがお世話にもなり複雑な気持ちで転職した。転職した理由はドラッカーの教えに素直に従っただけである。

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