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2016.05/19 マネジメント(3)

一人で仕事をするようになってから、指導社員は毎朝、「危険な出来事は無かったか」と尋ねる以外何も仕事の進捗について聞かれなかった。一週間ほどして、座学で1年間の業務を説明されるような指導社員だから、一年分の仕事を一か月で済ませたら評価してもらえるかもしれない、と考えるようになった。しかし、原材料倉庫の材料を評価しても座学で教えられた内容以上の新しいことは出てこない可能性がある、と心配になった。
 
原材料倉庫には、指導社員の名前が付けられた多数の樹脂材料が収められていた。しかし当時新素材としてマーケティングされていたTPEはその中に無かった。そこで指導社員からノルマとして言われていた樹脂材料以外にTPEも自分で取り寄せ評価することにした。
 
当時新入社員には残業手当がつかないだけでなく、必ず一年間は定時で帰宅する決まりになっていた。しかし、どの新入社員もその規則を守っていなかった。守っていなかったというよりも、今でいうところのブラック企業と同じ状態だった。しかし同期の誰もが楽しそうに仕事をしていた。当方も真似をして定時以降も仕事をするようになった。
 
初めてのサービス残業の翌朝、指導社員から定時に帰宅するように注意を受けた。その時当方の目論見を話したら、残業代は出ない規則だから無理をしなくてもよい、と言われた。手当はいらないから、土日も仕事をやってよいか尋ねたら、土日は勉強しろ、と叱られたが、そのあと休日出勤の手続き方法を教えてくださった。
 
指導社員は黙認状態だったので、頑張って一年間の仕事を一か月でやり終え、さらに一部取り寄せたTPEを使用して指導社員が発明した樹脂補強ゴムよりも性能の良い配合処方を見つけることができた。この成果を指導社員はほめてくださって、すぐにその処方で実用的な耐久試験をスタートした。
 
驚くべきことに、一般のゴムと耐久性が変わらない樹脂補強ゴムが得られ、これには指導社員もビックリされて、成果をほめてくださった。そしてすぐに報告書をまとめるように指示されるとともに、年内に組織変更があり、当方が異動することになると突然告げられた。
 
年が明け、当方と指導社員はそれぞれ別の部署へ配属され、当方は美人の指導社員の下で仕事をすることになった。ちなみに当方が見出した配合処方でその後自動車用エンジンマウントが開発されたという。これは初めての社業への貢献であり、指導社員のマネジメントの成果である。
 
このとき、指導社員がなぜ一年後の成果を最初に出してから仕事をしているのか、その理由を理解できた。研究所において課規模の組織変更は頻繁に行われていたからで、いつテーマが変更になるのか不明な状態だった。1年後の成果をあらかじめ出して仕事をやっていれば、テーマ中止を言われたときに、すぐに成果の出た報告書をまとめることができた。

カテゴリー : 一般

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