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2016.05/20 マネジメント(4)

女性の指導社員は美人で優しかった。しかし、当方の行動すべてを知りたがった。すなわち社内で何をやっているのか、逐一報告することを求めてきた。野放しにすると勝手なことをする、というレッテルが当方に張られていたからのようだ。
 
おそらく昨日までの指導社員からの引継事項だったのだろう。過去の居眠りについても忠告されたので理解できた。その指導社員の前以外では居眠りの実績は無かった。
 
そのほかにどのような引き継ぎ事項があるのか尋ねたら、いっぱい書かれている、と言われたが、野放しと居眠り以外の注意は受けなかったので、おそらく良いことがたくさん書かれている、と思ったら、当方が楽観主義だから指導者が注意するようにというコメントもあると言われた。
 
軟質ポリウレタン発泡体の難燃化技術開発が新しい指導社員と推進するテーマだった。しかし、テーマのタイトルは決まっていたが、何をするのか不明だった。新組織体制でこれから企画を作るのだという。そして一か月間は軟質ポリウレタン発泡体のワンショット法という技術をまず身に着けることが当方の最初の仕事だという。
 
機械を使用せず、高速攪拌機だけ使ってワンショット法により発泡体を製造するには、ゴムの混練作業とは異なるスキルが必要だった。数秒で反応の9割が進行するので大変である。それゆえ実験スキルの差が物性のばらつきとして現れる。
 
このスキル習得も大変だったが、企画作成業務はもっと大変だった。詳細は書かないが、当方のアイデアであるホスファゼン変性軟質ポリウレタン発泡体という企画がすんなりと採用された。
 
当方は、大学院修了式後の3週間、本来は春休みの期間に大学で新しいジアミノホスファゼンの合成とその重合に成功し、一度提出した修士論文に追加するとともにイギリスの学会誌に論文を投稿していた。
 
このできたばかりのジアミノホスファゼンを軟質ポリウレタン発泡体の変性剤に使えないか提案したら簡単に採用されたのである。提案した当方はまさか簡単に採用されるとは思わなかったのでびっくりしたが、もっとびっくりしたのは、半年後には試作を行うという計画が作られた。それは難しいといったが、新入社員発表会までに試作を完了したい、と言われたのでしぶしぶ受け入れた。
 
ジアミノホスファゼンを1kgほど合成する必要があり、1gしか合成経験のなかった当方は少し心配になった。しかし、指導社員から学生時代にできたなら1000倍のスケールなんて簡単よ、と言われ、なんとなく根拠は無いけれど気が楽になった。
 
問題は当時新素材として注目されていた原料のホスファゼンの調達方法だけである。市販品は無く、さらに素材の値段がついていなかったのである。指導社員は当方よりも楽観主義者だった。
   

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