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2017.03/15 パーコレーションと複合材料(3)

フィラーを高分子に分散するときには必ずマトリックスとなる高分子とフィラーとの間に相互作用が働く。フィラーのサイズが小さかったり静電気を帯びやすかったりしたなら、フィラーどおしの相互作用も問題になる。


このような相互作用を考えて科学的にこの問題を解こうとすると複雑になり難しい問題となる。科学の世界では、真理をわかりやすく導くために、しばしば現象を簡単にして議論が見えるようにする。


これをモデル化と言ったりしているが、パーコレーションの数学的取り扱いでは、最初に一切の相互作用を無視して統計的にパーコレーションが生じるモデルで議論している。そして今ではn次元のモデルまでパーコレーション転移の閾値が計算されている。


科学の世界は楽しく、何に活用できるのか分からないn次元までパーコレーションという現象が解明されているのだ。そしてモデルにより閾値が微妙に変わることまで確認されている。


すなわち、フィラーと高分子材料との間にまったく相互作用が無い、と仮定してもその閾値は、現象のモデル化すなわち現象のとらえ方で変化するのがパーコレーション転移である、と正しく理解していることは重要である。


具体的な知識として、導電性微粒子が真球でマトリックスとの間で相互作用がないと仮定したときに、体積分率で30vol%から60vol%の間で、閾値はばらつくということである。微粒子に異方性が出てくれば、それが20vol%あるいは10vol%さらにはそれ以下になる場合がある。


導電性のカーボンを高分子に分散して10の9乗Ω前後の体積固有抵抗で安定に作るという技術は、配合やプロセシングで工夫しなければ不可能に近いことだと容易に想像がつく。またもしこれがうまくいっているのなら、それは運がよかったということになる。


PPSと6ナイロン、カーボンという配合を変更せずにそのような体積固有抵抗で安定な無端ベルトを半年で完成してください、という要求は、パーコレーションという現象を正しく理解しているなら神頼みと同じことなのだ。引き受けた当方もプロセシングに一縷の望みをかけてサラリーマン最後の仕事としておみくじを引くつもりだった。


それがカオス混合技術という大吉のおみくじを引くことになっただけのことだ。ここまでは運がよかったが、退職日を2011年3月11日に決めたことは運が悪かった。当方のために用意された最終講演会も送別会も吹っ飛び帰宅難民になった。


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カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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