活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2017.06/06 山本尚先生の御講演(2)

山本尚先生は有機合成分野における触媒反応の権威で、「基質支配の反応」を御研究されてきた。ほとんどの有機反応は、「反応剤支配の反応」であり、今世紀に入りこの反応の分野で破壊的イノベーションが進行しているという。

 

すなわち、当量反応であった化学プロセスが触媒反応に塗り替えられているという。そうしたイノベーションを起こされた先生のご経験から、昨日のアカデミアの研究構造が語られている。

 

すなわち、先生は、アカデミアで未知の学理を探求され「純正」研究を進められた。そこで培われた「基礎」研究を応用研究まで展開され、有機合成の世界に破壊的イノベーションを起こされた体験を語っておられたのだ。

 

この、先生が実践された「応用」と「純正」に向かう真の「基礎」研究では、目標に沿った学理を世界で初めて見出すことが要求される。そして「純正」研究の目標では、流行を追わず、また狭い分野の科学技術にとらわれない融合研究領域を目指すべきで、新しい学問を創る気概が必要だと述べられている。

 

そしてアカデミアの研究者は未知の基礎学理を見つけ、新しい世界のイメージストーリーの提示が必要だと指摘し、それにより「Game Changing」を成し遂げると述べられた。

 

これは、アカデミアの研究の構造の視点で述べられた破壊的イノベーションのおこしかたであるが、ドラッカーも述べているパラダイムの変換による破壊的イノベーションの起こし方のアカデミア版と感じた。

 

先生は、研究を誰のために行うのか、という視点でも、応用研究と純正研究の違いを説明されていた。前者が人のためであり、後者は自分のためだ、と明確に言われた。このあたりは、研究者として年を重ねても純正研究だけをやり続ける姿勢について批判されている。

 

ご自身の研究について、アカデミアの研究構造に基づく説明でまとめられていたので、途中から参加したにもかかわらずご講演の意図を理解できた。しかし、産学連携における企業側への期待がうまく実行されるかどうかは難しいと感じた。企業側の問題は、もっと次元の低いところにある。

 

企業側の問題以外に、先生は指摘されなかったが、「今の時代の」アカデミア側の問題もある。すなわち「末梢」研究に走り、それをもとに「純正」研究を行うアカデミア側の問題である。当方はこれを「技術が科学を牽引し始めた」と以前この欄で指摘している。

カテゴリー : 一般 学会講習会情報 未分類

pagetop