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2017.12/19 高分子の難燃化技術(5)

1980年前後に高分子の難燃化に関する形式知の方向がほぼ整理されてきた。すなわち、燃焼という現象の前に高分子を不燃化する技術、というのは経済的にナンセンスであるという考え方に基づき、1.燃焼時に高分子を溶融させて火を消すアイデア、や2.燃焼時に空気を遮断し火を消すアイデア、3.火炎から逃げるように高分子を変形させ、初期火災の燃焼を防ぐアイデアなどである。

 

また、これらのアイデアを実現するための研究が加速し始めたのもこの時代である。同時に評価技術も業界における火災の状況に応じて制定された。燃焼に必要な最低限の酸素濃度を指数にした極限酸素指数値(LOI)は1980年代にJIS化されている。

 

この時代に登場した難燃化手法で今ではその考え方が否定されている3のアイデアや評価技術などが存在していた事実は、難燃化技術を科学で取り扱うときの難しさを示している。

 

建築の難燃化基準だったJIS難燃2級という試験法では、変形して炎から逃げるような材料でも合格とする試験法だった。その結果、燃焼時の熱で餅のように膨らみ変形して燃焼試験の炎から逃げるプラスチック天井材が難燃基準合格品として市場に普及していった。

 

また、アカデミアの先生もこのような材料がよいアイデア、と発言したこともあって各社が燃えやすい材料で変形して炎から逃げる天井材が開発されたので、防火基準に沿って建設された新しい建築で火事が多発し社会問題になっている。

 

社会問題化する前に当方は社内にあった天井材のLOIを測定し、その低い値に驚き、フェノール樹脂発泡体の開発を企画している。誤った形式知が正された時代という見方もできるが、高分子の難燃化技術は科学で取り扱いにくい(科学ではなく技術としてとらえるべき)と捉えたほうがよい。

 

ちなみに当時問題となった硬質ポリウレタン発泡体天井材料は、建築研究所で天井材の難燃基準が見直され、新しい準不燃規格が制定されたので規格外となり、市場から消えた。そして、フェノール樹脂発泡体天井材が新しいプラ天井材として採用されていった。このフェノール樹脂発泡体の研究過程で半導体用高純度SiC前駆体技術が誕生している。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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