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2018.01/09 ドラッカーの遺言(5)

「スーパースターの常として、知識にもとづくイノベーションもまた、気まぐれであり、移り気であり、極めて管理が困難である。」これは、ドラッカー著「イノベーションと企業家精神」(1985)に書かれている指摘である。

 

無機材質研究所に留学し、そこでゴム会社の創業50周年記念論文に投稿した高純度SiCのアイデアを実証した。そして3年の留学予定を1年で切り上げゴム会社に戻り、新事業開発をスタートさせたのだが、この書が発売される1年前に知識に基づくイノベーションの難しさを肌身で知ることになった。

 

ところで、イノベーションという言葉の意味を当方が初めて知ったのは、高校生の時に亡父から勧められた「断絶の時代」からである。学園紛争の表現に用いられていた断絶の時代というマスコミの誤用と、その時代に何を学ばなければいけないのか、と生意気盛りの当方を亡父は叱ったのである。

 

当時すでに知識社会の到来と米国主導のグローバル化、多様化の潮流(注)に日本は晒されていた。「断絶の時代」は今改めて読んでみても面白い書である。ドラッカーの洞察力は半世紀近い過去においても鋭かったことを理解できる。

 

日本相撲協会の騒動は、特別なものではなく日本の組織にありがちな風景の一コマであり、下された処分も、被害者がもっとも重いというおかしな結果になった。これは、被害者である当方が転職した経験とどこか似た光景である。

 

ドラッカーは、組織とイノベーションとの関係について「断絶の時代」の中で、「イノベーションのための組織は既存の事業のための組織とは切り離さなければならない」と指摘している。

 

ゴム会社で異色の高純度SiCのプロジェクトは、スタートこそ既存の組織とは切り離された運営だったが、いつの間にか既存組織の中に取り込まれてしまった。その結果迷走状態となったのだが、ドラッカーの一言一言がまことに至言であると思う。

 

(注)ダスティン・ホフマン主演の映画「卒業」には、母親が娘の彼氏(ダスティン・ホフマン)と情事に耽る当時としては衝撃的なシーンが出てくる。サイモンとガーファンクルの世界が映画全体に彩られ、スパイス的にデイブグルーシンのジャズが流れる感動的でありながら未成年には刺激の強い映画だった。しかし成人向ではないその映画の描く世界は、もう過去の世界になりつつある。今や既婚女性の国会議員が密室で年下の配偶者ではない既婚男性を従え、文春砲をはじき返す時代である。

カテゴリー : 一般

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