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2018.02/16 アイデアを出すコツ

ボーっとしているときにアイデアがひらめく、とはNHK特番から学んだ役に立つ情報の一つだ。最近は、電車に乗るときに本を読むのをやめて、ボーっとしている。ところが座ってボーっとしていて眠ってしまい乗り過ごすミスをした。

 

こうなると、アイデアのひらめきどころではない。役に立つ情報のはずが、ミスを誘発するとんでもない教え、と評価が変貌する。人間とは勝手な動物である。ボーっとする行動は、「ながら」でしない方がよい。特に自動車の運転では要注意。老人の事故や違反は厳しく批判される。

 

実は、ひらめき以外にアイデアをひねり出す良い方法がある。昔ベストセラーになったカッパブックスの「頭の体操」という本にもいくつか書いてあった。それらを実践してみて、良い方法と納得していた。これらは現代の脳科学でどのように説明されるのか知りたい。

 

さて、写真学会から賞を頂いたゾルをミセルに用いたラテックス重合法は、当方のアイデアを引き出すコーチングにより当時の部下が発明した技術である。面白いのは、その部下以外は皆コーチングの過程で否定証明を展開していたことだ。

 

積み重ねられた否定証明の山に当方もうんざりしかけたが、その部下は突然、あっと叫び実験室から当方の提案していた「あるべき姿」のラテックスを持ってきてくれた。それは、コアシェルラテックスの検討過程で実験に失敗したサンプルだった。

 

ある目的でゴールを目指して実験を行い失敗をする。しかし、その失敗で気にかかる現象があれば、コンセプトを現象に合わせて見直し再評価する作業は、技術開発で現象から機能を取り出したいときに、アイデア創出法として有用である。

 

これは、科学でいうところの仮説の見直しとは少し異なる。何故なら、実験の失敗が否定証明として使われることからご理解いただけると思う。

 

技術では、目の前に起きた現象を失敗ではなく、新たな現象として捉え、そこから機能を取り出す行為を実行する。すなわち、実験に失敗してもそこに新たな機能が生まれていないのか、現象そのもを見直す。科学のように失敗を前にしてロジックを見直すのではない。

 

コアシェルラテックスの開発では、コアとして用いたシリカにラテックス成分がシェルを形成するようにうまく巻き付かず、単なるラテックスとして合成される現象が、たびたび起きていた。科学者はこれを実験の失敗としてとらえるが、技術者は、シリカの新たな機能としてとらえるのである。

 

製品化が迫っていたので、ゾルをミセルに用いたラテックス重合法として特許出願、量産立ち上げを急いだ。某学会賞を受賞していたコアシェルラテックス技術を用いた製品よりも品質の高い新商品を開発できた。

 

これは、コアシェルラテックスよりもゼラチンを変性する機能が優れていたからである。その後、ゼータ電位の測定はじめ、ミセルとして機能しているのか科学的な分析を三重大学川口先生のご指導を頂き実施し、その発現を確認できた。この成果は学会等で発表している。

 

このようなことは書くべきではないかもしれない。写真学会では、高靭性高弾性ゼラチンの開発成果として賞を頂けたが、新しいラテックス重合法として臨んだ高分子学会技術賞の審査会では某先生から当たり前と批判され受賞を逃がした。

 

ところがその二年後、界面科学に関する科学雑誌で他の研究者からも、世界で初めてゾルをミセルとして用いた現象の紹介がなされた。それで、高分子学会の審査員の某先生は不勉強だった、と理解した。

 

アカデミアには、企業の失敗で得られた技術に対し新しい現象と捉え真摯に対応される先生がおられる。技術者はこのような先生を尊敬するが、自己の権威から新しい現象を前に笑い飛ばすような先生を愚かと思う。科学の手法が見直されるべき時代と感じているので、厳しい書き方をしている。

 

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