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2018.11/09 高分子の熱分析(8)

DSCで測定される高分子のTgやTc、Tmは、その高分子がどのような履歴を得てきたのかに影響を受ける。ゆえにエラー発見に有効なデータとなる。配合のミスはTGAの計測で発見できるが、DSCのデータからは、コンパウンディングから成形に至る過程で、特に熱的にエラーが無かったかどうかをDSC測定で知ることができる。

 

開発段階で10℃/minでよいからDSC測定をしておくように勧めているのはこのためである。それぞれのパラメータの現れた温度やエンタルピーを管理するだけでも意味がある。大きな熱履歴のエラーがあれば必ずどこかに日々の結果と異なる異常が観察される。

 

また、DSCの測定ではベースラインにも配慮したい。これがまっすぐ水平であれば何も熱的な変化をしていないが、曲線的な変化をしていたならば、何か変化がある。それが熱分解によるのか相変化によるのかは、TGAで確認できる。

 

曲線的な変化をしている温度領域についてDSCと同じ測定雰囲気でTGAを行う。その時、その領域で重量変化が観察され無ければ、相変化その他の変化を疑う。難燃剤が添加されている場合に、それが一部分解しているとポリリン酸を形成する場合があり、これは240℃以下では重量減少を示さずDSCでだらだらした吸熱カーブが得られる。

 

DSCで得られた異常な曲線(吸熱または発熱)で何が起きているかは、他の分析手法で解析しなければいけないが、技術開発過程では異常の発見ができることが重要である。

 

以前この欄で、生産ラインの異常があってもそれを認めずあくまでも成形工程に問題があると主張していたコンパウンドメーカがあったことを紹介している。データの捏造で社長が謝罪する時代なのでこのようなメーカーの名前を公開したいが、カオス混合装置のお客様になるかもしれないので名前の公開は控える。

 

面白かったのは、このメーカーのCTOが、議論の最中に苦し紛れに自分たちのDSCで以前のコンパウンドを計測すればベースラインはまっすぐになる、と答えたことだ。半年以上待っていてもそのようなDSCチャートを提出してもらえなかった。誠意のない会社と言ってしまえばそれまでだが、DSCをよく知らなかった可能性が高い。

カテゴリー : 高分子

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