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2018.12/20 技術開発経験談(12)

およそ研修期間中に習った内容や、ドラッカーのマネジメントに書かれた理想とは程遠い状態のように思われたが、マネジメントの意味が人を成し成果を出させることならば、指導社員のマネジメントや主任研究員のマネジメント姿勢はそれなりに成功していたのだろう。

 

樹脂補強ゴムのテーマは、特許出願され、そして1年後には化工品部隊により防振ゴムとして製品化された。研究部門として十分な成果が出たのである。しかし、この研究テーマでは研究部門の誰も評価されなかった、といううわさ話を聞いた。

 

その原因が当方にあった、というのだから忌々しき噂である。3ケ月でできるような簡単なテーマを1年の計画で計上していた、という噂も聞こえてきた。そこには当方の過重労働の頑張りの情報は無く、3ケ月間、他部署が研究部門を応援していた姿を誉める話が尾ひれとしてついていた。

 

指導社員はその後課長まで昇進され定年退職されたが、その知識の豊富さは、在職した12年間、その右に出る人を見たことがない。ゴム会社では能力やその成果を十分に評価されず退職される方が多いとも言われていたが、おそらくピラミッド組織で運営される日本の会社ではこのような事例が多いのだろう。

 

この時の主任研究員とは3ケ月の間、ほとんど会話をする機会が無かった。テーマについては指導社員がすべて報告していたからだが、当方が専門外の新入社員ということであまり期待されていなかったからとも他の人から聞かされた。

 

この話を信じるきっかけになったのは、この3年後当方が高純度SiCの開発に成功した時である。無機材質研究所に留学し人事部所属だったが、途中からこの主任研究員の方が上司になったと、筑波までご挨拶に来られ、その後当方の私生活も含め、いろいろ心配されたり、食事に誘われたりしたからである。

 

その姿勢が大変正直な方であきれたが、ある日新入社員時代の話をしたところ、専門外の新入社員を配属されたので指導社員に任せきりにされた本心を話され後に、謝罪された。この姿勢には誠実さを感じた。樹脂補強ゴムのテーマを終えて、とんでもない主任研究員が上司になるが、やはり管理職には誠実さが要求される。

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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