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2019.02/19 PPSと6ナイロンの相溶技術(4)

高分子の相溶という現象は、フローリー・ハギンズ理論に従えばχ=0となる条件でなければ生じない。学生時代に授業で触れられていないのに試験に出てきて驚いたのでよく覚えている。

 

試験は満点を取った時よりもひどい点を取った時の方が勉強になる。人生も同じで、高い授業料と言われたりする「人生のちょっとしたつまづき」は、その深みを増したりする。

 

ただし、失敗を失敗として放置していては成長は無い。失敗したなら嘆いていないでその失敗から学ぶ努力をすべきである。

 

学生時代にフローリー・ハギンズ理論を教科書だけでなくオリジナルの文献まで読む努力をした結果、いろいろ疑問点を抱え、その結果、大学院進学は無機材料の講座へ進学している。

 

フローリー・ハギンズ理論は、当時から理論というには雑な内容と感じていた。当方のセミナーで説明するパーコレーションの説明よりもざる理論である。

 

これを授業で説明せずにテストに出す教授の無神経さには驚いた。ただ、授業で説明できないと教授が思っていたなら誠実な先生とも思える。

 

テストに出したのは授業では説明しないが、覚えておいた方がよい、という思いやりの心である。しかし、そのような場合には5点程度の配分にすべきで20点の配点はきつかった。

 

ところで、これまでの研究結果で、結晶では相溶現象は見つかっていない。すなわち、相溶はすべて非晶質で起きる現象といえる。高分子の非晶質はすべてガラスである。

 

一方、押出速度を早めた結果、サイジングダイにおける冷却は不十分となり、徐冷状態で断裁されることになる。自動断裁機は、その押出速度に同期できないので、生産時と異なり裁ちばさみを用いて二人がかりで断裁している。

 

徐冷状態なので安定生産時よりもPPSは結晶化しやすいはずであるが、工場で起きている音の変化は、逆にガラス状態のベルトを扱っているような現象が起きている。

 

また、二人がかりでベルトにしわができてもお構いなしに切り刻んでいることから、金属音ならば大きくなるはずである。それが鈍い音になっている。

 

すなおにこの現象を解釈すると、押し出し速度を速くしたところ、PPSと6ナイロンの相溶が起きて、その現象は徐冷状態でもガラスのまま結晶化しないくらいに安定であることを示している。

 

科学的視点からは笑われるが、教科書よりも現場で起きている現象を信じることにした。収集されたゴミベルトをもらい受けてとりあえずDSCを測定した。

 

驚くべきことに、PPSと6ナイロンのTgは別々に観察されず、それぞれの本来現れるべきTgの間にたった一つのTgの変曲点が観察された。これは、PPSと6ナイロンが相溶している証拠だった。(明日に続く)

カテゴリー : 一般

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